「熱演に見入る」女は二度決断する ジンジャー・ベイカーさんの映画レビュー(感想・評価)
熱演に見入る
少し前から気になっていた作品だったので鑑賞。ファティ・アキン監督の作品は本作が初。かなり考えさせられる作品であった。
ストーリーはテロにより夫と息子を亡くした女性の苦悩を描いたもので三部構成。
まず、主人公カティヤを演じたダイアン・クルーガーには脱帽。精神的に追い詰められる難しい役を見事に演じ、訴えかけるような演技であった。その他の俳優陣の演技も見事で役にはまってない人はいなかった気がする。
ストーリーは難解なものではなく、主人公のカティヤに焦点を当て、割とスローなテンポで展開される。カティヤが何を考えているのか、どんな精神状態なのかと常に考えさせられ、その後の展開を予想しながら鑑賞した。第2部から3部にかけてはスリリングな描写もあり、見ていて飽きることはない。
やはり、見どころは第3部「海」であろうか。二度の決断とその精神性を追うのにもつらい。スマホの動画を見て彼女は何を思ったのか。雨も涙も血液も全て海に流されて良かったのか。考えさせられることは多い。
ここまで主人公の負の感情を役者が体現した映画は今まで見たことがない。重いテーマを赤裸々にシリアスに描写し、ここまで我々に普遍的な問題を提示してくる映画も今まで無かった気がする。
ダイアン・クルーガーの熱演に圧倒され、世の中を顧みるきっかけを与えてくれる作品であった。
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