劇場公開日 2018年2月23日

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「白い女たちの異常な愛憎」The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0白い女たちの異常な愛憎

2018年11月21日
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鑑賞方法:DVD/BD

怖い

萌える

ドン・シーゲル監督&クリント・イーストウッド主演の1971年の『白い肌の異常な夜』をリメイク。
…と言うより、原作小説を再解釈&再映画化と言った方がいい。

南北戦争時代。負傷した北軍伍長が森の中にある寄宿学園に助けられる。
そこでは、先生2人と生徒5人、女だけ7人が暮らしていて…。

71年版では北軍兵の視点で描かれていたが、本作は女たちの視線から。
ある意味、ホラーも真っ青であった…!

女の園に、男が一人。
男の考え方によっちゃ、ハーレム。
しかし、女たちにとっては…。
紳士的な彼に、皆が色めき立つ。好意以上のものを抱く。
…いや、もっとえげつなく言うと、肉食動物の群れの中に草食動物一頭を放り込んだかのような奪い合い。
とっくに女の盛りを過ぎたと思っていた先生の一人はすっかり心を奪われ、早熟な年長生は積極的にアプローチ。
彼の愛は、私だけのもの。
清楚な女たちの静かだった園が、嫉妬や欲望渦巻くドロドロ、ギスギスした園に。
女が女の顔を出した時、思わぬ事件が…。

これは女たちの方に否があるのだが、その事件がきっかけに、伍長が豹変する。
幾ら負傷してるとは言え、女たちを脅かすには充分。
一転して、戦慄の修羅場に。
そして女たちはある決断を…。

ソフィア・コッポラが愛憎スリラーで新境地。
女性ならではの感性で、女たちの不調和や狂気をあぶり出している。
ソフィア・コッポラと言えば、その美的センス。
自然の照明とフィルム撮影で、終始薄暗い閉ざされた学園の不穏な雰囲気を、おどろおどろしくも美しく映し出している。
女たちの意味ありげな真っ白な衣装も印象的。
心理描写も映像センスも上々の手腕だが、でも果たして、カンヌで監督賞を受賞するほどであったかな、と…。

キャストたち…とりわけ、女優たちの美の競(狂)演。
品格と理性を保つ学園長ニコール・キッドマンはさすがの存在感。
貞淑な教師キルスティン・ダンストの複雑な内面演技。
大胆に誘惑するエル・ファニングの小悪魔のような魅力。
十人十色。女たちのしたたかさと怖さ。
不憫なのはコリン・ファレル伍長。気の毒なくらい災難でしかない…。

女だけの園は決して楽園ではない。
開かれた禁断の扉の先には…。
白い女たちの異常な愛憎。

近大