劇場公開日 2018年8月24日

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「異なる正義を貫く2人の検事の戦い」検察側の罪人 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5異なる正義を貫く2人の検事の戦い

2022年11月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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邦画らしい本格的な社会派ミステリーであり、見応えのある力作だった。本作は、容疑者取り調べにおける人権侵害など、司法が抱える今日的な問題を織り交ぜながら、正義の在り方を鋭く問い掛けている。

本作の舞台は東京地方検察庁。新米検事・沖野(二宮和也)は、刑事部に配属され、心酔していた凄腕検事・最上(木村拓哉)とともに、老夫婦殺人事件を担当することになる。2人は警察と協力して次第に容疑者を絞り込み、既に時効が成立した過去事件の容疑者だった松倉(酒向芳)に辿り着く。松倉は犯人なのか?を巡って、次第に2人の検事は対立を深めていく・・・。

最上も沖野も強い正義感を持っている。どちらも、己の正義を絶対に貫こうという強い信念に溢れている。しかし、2人の正義は異なっている。最上の正義は、目的のためには形振り構わない、手段を選ばない、という凄腕らしい現実的なものである。対する沖野の正義は、法の下で正義を貫くという、若者らしい純粋でストイックなものである。

そんな2人の激論シーンは、相容れない異なる正義のぶつかり合いであり迫力十分。更に、本作で最も印象的なのは、沖野の取り調べシーンである。緩急を全くつけない二宮和也の怒と激に徹した演技に、沖野の途轍もなく強い正義が画面から溢れ出てきて圧倒される。

本作で2人の正義が際立っているのは、2人の正義が異なっているだけではなく、正義の対極にいる悪党たちが個性的であり強烈な存在感を示しているからである。正義の在り方を問うには、悪が悪らしく憎々しくなければ説得力がない。そういう意味では、本作に登場する悪党たちは非の打ちどころがない。申し分ない。

本作は、前半に巧みにばらまかれた様々な問題提起を後半にまとめ切れず、ラストの切れ味が悪い。しかし、本作は、奇をてらわず、真正面から正義の在り方について迫っているので、難はあるが、骨太で見応えのある作品に仕上がっている。

みかずき