劇場公開日 2018年8月24日

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「何度も思い返して楽しめる映画」検察側の罪人 shironさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0何度も思い返して楽しめる映画

2018年7月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

二つの正義が対立する物語かと思っていましたが、戦後の日本を考えさせられる映画でもありました。
平和慣れした危機感のなさ、成り立っていない三権分立。
でも、だからと言ってゴリゴリな社会派ではなく、エンタメとして観客をグイグイ引きつけるところに、原田監督の映画人としてのプライドを感じました。

とにかく登場人物全員が魅力的!
一人一人丁寧に描かれているので、観た後も彼らのバックグラウンドや、シーンに無いシーンの勝手な妄想が止まりません。
なかでも、容疑者 松倉の迫力にはブッ飛びました!!
自宅の装飾と軽やかなステップも相まって、もっといろんな反応を観察したくなる人物像に大興奮!
思わず酒向芳さんにチェックインしちゃいました。

装飾と言えば、ブローカー諏訪部の懺悔室も素敵。
イイ男にはイイ女。
運び屋の存在も諏訪部の男っぷりを引き立てます。
二人の関係だけで映画一本分の妄想が(〃ω〃)

同じく容疑者の弓岡。大倉孝二さんは元からファンなので、今回も何とも言えない小者感と憎みきれない人間っぽさが素晴らしく、木村拓哉演じる最上の葛藤と身勝手さを強く印象付けていたと思います。
映画に限らず、悪役(適役)が魅力的でないと面白くない!
そう言う意味では、木村拓哉も魅力的な敵だったと思います。

“ザ☆戦う男映画”のイメージでしたが、信念のもとに戦う女達も素敵でした。
吉高由里子が演じる初々しい検察官はキーとなる役所ですが、後半にかけて更に魅力が加速!
ラストのセリフには痺れました〜。
私もあの声で、あんな風に言われてみたい!

国選弁護人夫婦も、突っ込みどころ満載の濃いキャラで、すごい前髪の奥様は補佐と言うより同志。
いや。裏の参謀にして司令官かも?
この夫婦のスピンオフで一本妄想出来ますww

出番は少ないものの、割烹の女将も自分の流儀でのし上がった感じがするし
遺族の乱入を止める為に、ものすごく毒づいてた女性も、男の職場で一歩も引かないで戦っていたと思います。

映画という限られた時間の中で伝えられる情報はほんの僅かですが、
見た後にテーマについて考えたり、私のようにサイドストーリーを妄想したり…
一粒で何度も反芻して楽しめるところが映画の魅力。
見た時間より思い返す時間の方が長い映画が、名作だと思います。

shiron