劇場公開日 2018年10月20日

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「「二面性」あるいは「相反する性質の同居」」テルマ f(unction)さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5「二面性」あるいは「相反する性質の同居」

2018年10月28日
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主人公テルマは生物学を専攻する大学生。
量子力学の講義では「光の粒子性と波動性」が言及されることによって、「二面性」が暗示される。
テルマは生命の起源について神を必要としない説明を好む一方、父の導きによって、キリスト教の規範を深く身につけている。禁酒、禁煙、禁欲(異性愛)。
ところが旧約聖書の「楽園追放」さながら、彼女に"蛇"が忍び寄る。アンニャは、同性愛、酒、タバコによってテルマを誘惑する存在である。
幼少期から身につけてきたキリスト教的価値観と、反キリスト教的快楽による誘惑とのあいだで、主人公は揺れる。同時に、テルマの身に起こった痙攣発作の原因について、科学的説明の探求と、超自然的説明の探求が(観客のなかで)並進する。主人公はまた、両親に対して相談することもあれば、隠すこともある。信頼することもあれば、秘密のままにしておくこともある。これもまた、二面性かも知れない。

しだいに明かされる主人公の秘密は、公平でもなく、また善や悪のどちらか一方に全面的に加担するわけでもない。キリスト的(キリスト教的、ではない)側面も、悪魔的側面も備え持つ。本人の欲求にしたがって用いられる、人間的なものである。善行にも使えるし、自らの欲望のためにも使える。善意も欲望も併せ持ち、共に自分で制御しながら、テルマは自らの人生を選択していくのだろう。

f(unction)