「小泉徳宏監督の青春映画大好きです。」ちはやふる 結び Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
小泉徳宏監督の青春映画大好きです。
"競技かるた"というマイナー・スポーツを有名にした、末次由紀の大ヒットコミックを映画化。2016年3・4月に公開された「ちはやふる 上の句」、「下の句」の2部作につづく完結編。
実時間も公開後2年が経ったが、劇中の綾瀬千早(広瀬すず)も高校1年生から3年生になっている。
なによりも主要キャストたちの2年の成長が、映画の完成度を大きく押し上げている。かるた競技シーンや、演技の安定感は見事というしかない。もし前2作を未見でも本作だけで十分楽しめる。
この2年、主演の広瀬すずの大躍進がめざましい。先日の日本アカデミー賞で、最優秀助演女優賞を19歳にして獲得した (「三度目の殺人」で)。長澤まさみの17歳という記録はあるが、10代での受賞は快挙である。
また、共演の上白石萌音は、「ちはやふる」出演後の「君の名は。」の主演・宮水三葉役として有名になっている。
千葉真一の長男である新田真剣佑は、前作では映画初出演の新人だった。芸名は"真剣佑"で、映画デビュー作の「ちはやふる」の役名である"綿谷 新"(わたやあらた)から、"新田"の姓を取って現在に至る。本作では序盤で、綿谷 新が千早に告白するところから始まる。
本作は、小泉徳宏監督の、"ちはや愛"がビシビシ伝わってくる完結編である。いつもながら小泉監督の映画は、BGMの使い方タイミングと間(ま)がいい。かといって音楽ばかりでなく、無音シーンの挟み方が素敵だ。
原作連載中の映画化は、どうしても原作とは違うストーリー展開にならざるをえない。その点、小泉監督といえば「カノジョは嘘を愛しすぎてる(カノ嘘)」もそうだったが、原作を読み込んで自身で脚本を書き下ろし、独自の展開とオリジナルの結末を導き出している。
今回のこだわりも半端なく、原作にない新キャラクターの登場させている。千早のライバルとなる準クイーンの我妻伊織(清原果耶)、そして史上最強の名人・周防久志(賀来賢人)である。それぞれが重要な役割なのだが、登場の仕方に違和感がない。
面白いのは、その我妻伊織が綿谷 新に何度も告白して振られるシーンが繰り返される。
"付きあって"と言う伊織に、新のセリフはいつも、"ごめん、好きな人いる"であるが、徐々にその返しが早くなっていく。それを、かるた部のメンバーが"一字決まり"、"二字決まり"と表現をしている。これは百人一首の、上の句の"決まり字"を引用したものだが、このかるた的ツッコミは、小泉脚本のオリジナルである。
これで終わってしまうのは切ないが、高校3年間を駆け抜けた、瑞沢かるた部の青春の一瞬が輝いて見える作品である。
そして小泉監督の次の青春映画、待ってます。
(2018/3/17 /TOHOシネマズ日本橋/シネスコ)