「まだ終わっていない。」彼女の人生は間違いじゃない 松村 訓明(まつむら のりあき)さんの映画レビュー(感想・評価)
まだ終わっていない。
主人公は、市役所に勤務し、休日にはバスで東京に行き、デリヘル嬢として働く女性です。母は津波に流され行方不明で、父の本業は農業ですが、避難しているということもあり、仕事をせず賠償金でパチンコをする日々を送っています。この映画を観終わって、真っ先に思ったことは、まだ東日本大震災の復興が終わっていないということです。
元彼が主人公に言います。「友人が津波で流されて、遺体で見つかった。」主人公は言います。「まだ遺体が見つかっただけでも良かったじゃない。」
また、別のシーンでは、父は海の中にいるであろう妻を案じて、「寒いだろう」と言いながら、涙を流し、服を海に投げ込みます。この映画の中で一番悲しかったシーンです。一刻も早く行方不明となっている方が見つかり、遺族のみなさんに安心して欲しいと思いました。今も行方不明者の数は、2,554人います。(3/11現在、警察庁調べ)
映画の中では、自宅に帰るにも、短時間の許可を受けて避難区域の中に入るシーンがありました。その家に辿り着くと、部屋の中も荒れ果てており、掃除をする時間も十分取れないため、荒れることに任せています。放射能の悪い影響が早くなくなって欲しいと思いました。現在、約93,000人の人が自分の家で生活できずに、暮らしています。(6/16現在、復興庁調べ)
また、ある日、主人公が父に「いい加減にしてよ、賠償金すべてパチンコで使ってしまう気。」と言いました。被災したことで、生活のリズムが狂い、希望を失っている人もいるのかと思いました。主人公も自分を取り戻すためもがいているシーンが多くありました。東日本大震災から6年が経過し、被災した地域から離れて住んでいる私は、日々、東日本大震災で避難している方を目にすることがありませんので、記憶が薄れてしまっていました。東日本大震災で被害に遭われた地域が復興するまでは忘れてはいけないと思いました。
今回の映画は復興がまだ終わっていないということを認識させてくれる素晴らしい映画でした。東日本大震災の被災者だけでなく、最近の九州豪雨の被災者に至るまで、全ての被災者が希望を失わずに生活していけることをお祈りしています。
拙文をお読みいただきありがとうございました。