「ボスのキャラは最高、内容も悪くない、けど…」ボス・ベイビー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ボスのキャラは最高、内容も悪くない、けど…
まだまだ甘えたい盛りの男の子の元に赤ちゃんがやって来て、パパママの愛情が奪われ面白くない…って所は現在賛否両論公開中の『未来のミライ』と似通っている。
違うのは、男の子が4歳じゃなく7歳、赤ちゃんが妹じゃなく弟、その赤ちゃんは“やって来た”。
7歳のティムの家にやって来たのは、スーツを着た、見た目は赤ちゃん、中身はおっさんの、“ボス・ベイビー”だった…!
赤ちゃんは何処からやって来るの?
赤ちゃんはパパとママが…ってのは、実はウッソ~。
赤ちゃんは“ベイビー株式会社”からやって来る。
赤ちゃんとして家族になる赤ちゃんも居れば、ある任務を帯びた赤ちゃんも。ボスは後者。
昨今、赤ちゃんの立場は子犬に奪われつつある。
とある会社が、永遠に子犬のままの子犬“フォーエバー・ワンコ”を産み出すという。
そんなのが誕生したら、赤ちゃんの立場は…!
ティムの両親がその会社の社員。
情報を入手しつつ、近々開かれるお披露目会に潜入し、子犬から赤ちゃんの立場を守れ!
…そんな任務の事など全く知らないティム。
パパママの愛情を奪うこの憎き赤ん坊を追い出そうとする。
ボスにとっては単なるお邪魔虫。
7歳と赤ちゃんの一大バトル!
(※これはコメディ・アニメです)
…ちょっと待てよ。
ボスは任務さえ成功すれば、家を去る。ちなみに会社での昇進も約束される。
任務が成功してボスが家を去れば、パパママの愛情はまたティムに戻る。
上手くいけば、両者にとって結果オーライ。仕方ない、ここは…。
普通は協力し合って“仲良くなる”けど、協力し合っても“仲良くならない”兄弟を演じる。
さてさて、遂にフォーエバー・ワンコお披露目会の日。
一生懸命“仲の良い”兄弟を演じ、ティムとボスも作戦通り会場に潜入成功!
が!そこには、恐るべき陰謀が…!
何と言っても、このボスのキャラが最高!
大人口調でメッチャ喋るし、バリバリ働く上昇思考のサラリーマン。なのに、見た目は赤ちゃん。
『テッド』もそうだけど、こういうギャップはどうしても笑える。
オリジナルの声は、アレック・ボールドウィン。そのキャスティングがユニーク。
吹替は、ムロツヨシ。吹替で見たが、ムロツヨシの声もなかなか良かった。
日本では5歳児の視点から大人の世界を皮肉った某人気アニメがあるが、本作は赤ちゃんの視点から。
会社という激しい競争と縦社会を皮肉り。
泣く赤ちゃんを親があやすという光景を、ボス(=赤ちゃん)に親が服従というブラックな見方も。
『シュレック』のドリームワークスらしい辛口ユーモア。
ご安心を。
本作は真っ当なファミリー向けアニメ。
子供の成長。
家族の大切さ。
いがみ合ってたティムとボスの間に次第に芽生える兄弟愛…。
全く飽きないほどテンポ良く、笑えて、楽しく、面白く、『未来のミライ』よりもっとストレートに兄弟愛や家族愛を訴えている。
思ってたより面白かったが、アカデミーアニメ映画賞ノミネートは如何がなものか…?
確かに想像力やユニークさやメッセージ性やハートフルさも込められてはいるものの、言ってみれば、ドタドタコメディ・アニメ。
『怪盗グルー』や『SING』のイルミネーション・スタジオの作品は未だノミネートされた事無いというのに…。
日本からエントリーされていた『この世界の片隅に』を差し置いてまで…。
ちょっと考えちゃう。
ま、これもボスの手腕か。