「嘘から知った秘めた想い」嘘を愛する女 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
嘘から知った秘めた想い
駅のホームで具合が悪くなった所を、由加利は一人の男性に助けられる。
そんな出会いでその男性・桔平と同棲を始めて5年、彼がくも膜下出血で昏睡状態になる。
しかし、それがきっかけで信じられない事が発覚。
彼の全てが嘘だった…。
“夫は誰だった?”という実際の新聞記事から着想。
ミステリー風味のラブストーリー。
名前も偽名。免許証も偽装。
研修医という肩書きも嘘で、医師免許も偽装。
身内は無く、友達も一人も居ない。
あれよあれよと明らかになる彼の素性は、存在していない人間のよう。
何故、今まで気付かない?
無理もない。
誰が愛する人の事を疑おう。
彼の事を信じ、全て受け入れていたのだから…。
動揺を隠せない。
今までの愛は嘘だったのか。
キャリアウーマンとして順調だった仕事にすら身が入らない。
彼の本当の事を知りたい。
探偵を雇って彼の事を調べ始める。
知らなかった彼の一面を知る。
彼は密かに小説を書いていた。
それは、瀬戸内海で暮らすある家族の話。
これは創作か、それとも…。
真意を確かめる為、瀬戸内海へ。
そこで辿り着いたのは…。
彼は何者か。
謎が謎を呼び、少しずつ少しずつ判明していくミステリー的要素は興味惹かれる。
それ以上に本作は、アダルトなムードのラブストーリーだ。
それを醸し出しているのが、長澤まさみと高橋一生のカップリング。
それにしても、長澤まさみはいつの間にやらこういう作風も似合う大人の女になった。少女の面影はもう昔。
ほんのり色気漂ういい女っぷりと魅力をたっぷり堪能。
高橋一生もミステリアスに。
吉田鋼太郎、DAIGO、川栄李奈ら個性的なキャスト。
中でも吉田鋼太郎は、さすがの存在感とユーモアももたらす。
瀬戸内海で辿り着いた彼の過去。
ありがちと言えばありがち。
実話ベースとは言え、ちと捻りやインパクトに欠けた。
吉田演じる探偵の別れた家族とのエピソードはちと蛇足感。悪くはないのだが。川栄の役所もユニークだが、本当に必要だったかと問われれば…。
また、賛否分かれそうなのは、長澤演じる由加利の性格。
まあ、自己チュー。
シビアなくらい仕事一筋。桔平も心配するくらい。
協力してくれる探偵にも配慮や礼に欠ける。
ホント、終始振り回され、関わった周りの人たちの気苦労を察する。
そんな自己チュー女の自分自身を見つめ直すまででもあるのだけれど。
相手の隠したい秘密や過去を知ったって、何もいいもんじゃない。
彼の悲しい過去を知り、何が出来るか。
でも、小説に込められた彼の想いは知って良かった。
彼は再び愛せる人と出会い、もう一度歩み出そうとしていた。
私の愛も、彼の愛も、嘘ではなかった。
あなたは、愛する人の事を知っていますか…?
悲しい過去を嘘で隠しても、それを受け止め、秘めた本当の想いと共に、愛する事が出来ますか…?