歓びのトスカーナのレビュー・感想・評価
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なかなか熱い友情ストーリー
孤独で愛されなかった2人が少しずつ友情を育んでいく姿には、否応なくグッと来ました。
特にベアトリーチェが素晴らしかったです。彼女は与える人で、その姿勢はノブレス・オブリージュを体現しているようにも思えます。彼女は実母に冷たく当たられるし、過剰な与えっぷりは寂しさの裏返しだろうとは思いますが、根っこのところでは愛された体験があるように思えました。発病はしちゃったけど、奥底では愛を受け取っていて、だからこそドナテッラに愛を与えることができたのだと感じました。ドナテッラのニーズをちゃんと見抜けているあたりから、他者の気持ちをキャッチできる現実的な能力も持ち合わせておりますし。
とはいえ、薬が切れて酒が入ると流石にヤバく、カジノのシーンは発病した人独特の迫力があってビビりました。
ドナテッラは明らかにパーソナリティ入ってる人で、根っこに愛され体験はなくて、真の孤独を生きざるを得なかった印象。彼女を見ていると悲しさと寂しさがビンビン伝わってきてしまう。そんなドナテッラがベアトリーチェに引っ張り回されるときに少しだけ嬉しそうな表情をするように見えて、それが素敵だった。クライマックスの海辺のシーンも美しく、心が揺れました。
イタリアの精神医療についてあまりよく知らなかったのですが、2016年に『むかしMattoの町があった』と言うまさにイタリアの精神医療の歴史を描いた映画が公開されており、これを観て行けばより深く楽しめただろうな、と後悔。ヴィラの開放的な雰囲気はなかなか魅力的で、寝室を隔てる壁がないとこ以外は居心地良さそう。
風景の美しさは流石イタリア映画、って感じで満足です。中盤がややドタバタした印象は否めないですが、ストーリーも比較的丁寧で盛り上がりもあり、かなりポップな魅力がありました。
ヴァレリア・ブルー二・テデスキのセクシー美熟女っぷりにもすっかりヤられました。どっかで見たな、と思っていましたが、『アスファルト』の喫煙所の看護婦だった。あの時は魅力を感じなかったけど、ゴージャスでセレブ感のあるファッションが似合うからか、とても印象に残る。
人生と幸福と土地と
清々しい。
何がこんなに清々しいのか。それは予告編を見た通りの人間賛歌的ストーリー、そしてトスカーナという土地力によるものだろうか。
私たちとは国も状況も全く異なる(何せイタリアの診療所でのことであるので。)人の生き方というのは、このような映画でしか普段知り得ないことである。我々がもしイタリアに訪れることがあるとするならば、大抵はミラノやローマの史跡を見物するくらいであろう。しかも、ほとんどの観光客はただそのレガシーの表層にしか興味はなく(現代で言えば表層にさえも興味がないかもしれない。若い観光客がコロッセオやガレリアに訪れることの目的なんてものはなく、訪れることが目的なのである。instagramに写真を載せることが目的なのであればただネットから写真を拾って投稿するのと何ら変わりはないだろう。)、その史跡が実際に使われていた当時の生活、人々の暮らしぶりが如何に素晴らしかったかを学ぼうとしない。現代のイタリアの一般庶民の生活など言うまでもないだろう。
私はこの映画の魅力に、ストーリーの良さは勿論だが、そのストーリーを抱擁する土地力があると感じられた。不条理な人生に悩まされる二人の女性。彼女らがこの土地で見つける幸せとは、いかなるものなのか。こんなに素晴らしい緑が拡がっているトスカナなのであるから、診療所に閉じ込められるのが憂鬱になるのも当然だ。彼女らが、診療所から脱走し、二人で地中海沿岸の商店街・ビーチでお酒を飲み交わすシーン、あれはなんら特別劇的なシチュエーションでもないかもしれない。しかし、彼女らにとってはあれが至極の幸せなのである。それを観る私も、観光客さながらリゾートでリラックスしているような、そんな幸せが湧いてきた。
誰もが感じたことであろうが、心中のシーンの美しさは言うまでもないだろう。心中というシーンにあれだけ美しさと愛情を感じられることがあっただろうか。そのあとの息子とのビーチでの再会と相まって、涙を誘う。
何か憂鬱になって苦しい時、自分の知らない世界でリラックスしたい時、是非観ていただきたい作品だ。私のイタリアへの憧れが一層強まった夜であった。
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