「推理モノと言えません」ラプラスの魔女 落ち穂さんの映画レビュー(感想・評価)
推理モノと言えません
犯人は超能力者?
推理モノでそれやったらダメなのでは…
原作は未読だが、本当にこんな内容なのか?
あと、教授(櫻井翔)の存在が完全に不要。
教授としての専門知識を活かす場面も本人にその気もなく、ほぼ運転手を務めるだけの役。
配役としても、若いのに教授というエリートらしさも皆無で、紙飛行機飛ばしてるうだつの上がらないオッサンになってる。
終わるまで、このキャラの存在にずっと違和感があった。
言うなれば、刑事(玉木宏)も不要。
政府の圧力に屈する部分が殆ど描かれておらず、上司から言われておしまい。これだけの役に、わざわざ主役級の俳優を配する意味があるか?
家族を失った悲劇の映画監督(豊川悦司)も、こんなに演技下手だったかと驚かせるほど。
安い舞台みたいな長い台詞、ダサい狂気の目のアップ、衣装も映画監督ってこんな風なんじゃと高校生あたりが想像して持ち寄った感じ。
最後の大舞台であるボロ屋敷も外観はCG感満載、内部はセット感満載で、もうちょっと現実味出すつもりなかったのかと驚くばかり。
もう、わざとなのかなと思うくらいの豊川悦司の大袈裟な一人芝居の間、息子(福士蒼汰)はぼーっと立ってるだけだし。
そんなシーンより、病院での父親と息子の会話のやり取りの不自然さ(記憶喪失なのにそこについての焦燥感がゼロ、父親や友人と会うのを嫌がる)の理由がわかるシーンをもっと出して欲しかった。身動きできない息子の息詰まるような焦燥感とか父親への熱い思いとか、ブログでのシーンとの対比をもっと濃密に描いて欲しかった。
ところで、この話には、超能力者(広瀬すず)も特にいらない。教授を連れまわしての自分の監視役との追いかけっこ、超能力を使っての救出、どちらも本筋に全く関係ないからだ。
監視役は本当は広瀬すずを自由にしてあげたいと思っていたから監視もユルユルだったとか、そんなことを匂わせる設定までいらないし。
彼女の父親(リリー・フランキー)の能面のような表情や口調も、キャラとしてわかりやすいのかもしれないが、極端に淡々と静かに喋るので、眠くなるポイントの1つだった。というか、今時、アニメですらこんなベタな表現しないって。
この2人のシーンが長々入るので、やたら長い映画になってしまっているが、話として肝心の福士蒼汰の出番より多いのも解せない点だった。
推理モノとしても映画としても、こんな面白くない映画を観たのは久しぶりだった。
演者を腐らせるにはこうした演出をしたらいいという見本の映画だった。