「原作との違い・良かった点と残念だった点」ラプラスの魔女 uさんの映画レビュー(感想・評価)
原作との違い・良かった点と残念だった点
原作小説を読み、映画化されているとのことでDVDにて鑑賞しました。
小説で印象に残ったのに映画で省略・変更されてしまい残念だった点をいくつか上げます。
・武尾の人となり、円華のボディガードに任命された経緯、またその真意(監視役としても使われていた)が全く描かれておらず、ただ円華を追いかける怖い人になっている。
・未亡人となった千佐都は原作ではもっと知的で利己的な印象があり、本当に夫を偶然事故で亡くしただけなのではないか?という雰囲気があるが、映画では単純に財産目当てに夫を殺した若い妻感が拭えない。
・謙人がラプラスの悪魔の能力を使って千佐都に近付き、彼女を自分の復讐に利用するに至った経緯が全く分からず、どうやって接点を持つに至ったのか全く描かれていない。ラプラスの悪魔の能力が人の心までも掌握出来るのだという描写なので省略されたことがかなり惜しい。
・青江教授には妻子があり、それにより甘粕のブログを読んで同情・共感・感情移入していた節があったが、映画では独り身のように描かれておりその描写はなし。
・円華がボディガード達の尾行すらも利用して千佐都を追い詰めるに至った部分が完全カットされ、寧ろボディガード達に簡単に捕まってしまっている。全体的に円華の利口さが分からない。
その他にも色々気になった点はありますが、逆に映画として仕上げるには良かったのではないか?という違いを上げます。
・青江教授の変人度がなんとなく増している。(ガリレオに寄せている感じ?)
・円華が年頃の女の子らしくなっている。(良くも悪くも)
・謙人と円華のエピソードが恋愛的に描かれている。(良くも悪くも)
・青江教授の助手、奥西のキャラが立っている。(私は原作での淡々として利口な雰囲気の奥西が好きですが)
・原作では円華のラプラスの悪魔の能力を印象付けるためだった紙飛行機のエピソードが青江側のエピソードとなり、クライマックスで円華が活路を開くヒントとなっている。これにより最後の事件を食い止めることに青江教授が協力した感が明快に増している。
全体的には、この小説を二時間以内の映画に纏めるのは無理があったな、という印象です。
小説を読み終えた後の面白かった!という気持ちの三割程度でした。
前半の二件の事件と円華と青江のやり取りがかなり駆け足な割に最後の事件の描写がとても間延びしていて(あんなに長々と空を映したり風を吹かせたりしなくてもいいのでは?)、この長さの映画でももう少しやりようがあったんじゃないか?とは思いますが、そもそもワンクールのドラマでじっくりやって欲しかったなと思います。
特に演技力やキャストで残念だと思った点はなかったので、只々脚本が勿体無いなという印象でした。
もしこの作品に興味を持った・見た方で小説を読んでない方がいらっしゃるのなら是非原作も読んで頂きたいです。
原作は間違いなく面白い作品です。