劇場公開日 2018年5月4日

「三池監督にしてはまとも…(笑)」ラプラスの魔女 flying frogさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5三池監督にしてはまとも…(笑)

2018年5月14日
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鑑賞方法:映画館

粗製濫造型の三池崇史ということでまったく期待していなかったのだが、以外にまともで驚いた(笑)
まあ、原作をほぼ忠実になぞっただけなので、大きな破綻はしようがないか。

ただ、数少ない原作からの改変箇所がことごとく空回りしていたのは三池崇史らしい(笑)
例えば甘粕才生が廃人のふりをしているところなど、そもそも何のためにあの事件を起こしたのかが根底から覆ってしまうのだが…
端折りすぎて原作未読者には訳が分からないところもいくつか。

細かいシナリオ的な瑕疵はあるものの、むしろ三池作品にしては少ない方だし、何と言っても広瀬すずと豊川悦司をキャスティングできた時点で勝ちは決まったも同然。
2人とも見事な演技と存在感。

映画のパンフの中のインタビューで、三池崇史が甘粕才生のことを、"気持ちは分からないでもない"、"狂人というより身近に感じられる"、"青江と大きな違いはない"、"原作者の東野圭吾は登場人物の生き方に肯定的"、などと発言しているのが笑える。
「悪の教典」でも蓮見をやたら英雄視する発言が目立ったが、ほんとサイコパスに親和性が高いお人だ(笑)

そもそも甘粕才生の生き方、というか価値観は原作ではむろん全否定されてるのだが、そんなことも読めていない三池崇史はいつもの三池崇史だが、何とか映画そのものが破綻しなくて良かった。(「悪の教典」はかなり踏み外していたからなぁ…)

パンフでは原作者の東野圭吾も、「我ながらでたらめな物語だと思う。これまでの自分なら絶対に書かなかった小説」と言っているが、「え?『秘密』は?『パラレルワールド・ラブストーリー』は?」と思ったのは私だけ?(笑)

それにしても、「ラプラスの魔女」というタイトルで既にネタバレしているも同然を、そのまま最後まで引っ張るのは東野圭吾にしてはクオリティが低い作品、と思う。
ラプラスの悪魔って、現代では否定されている概念なのだから、量子論(不確定性原理)と絡めたオチに持っていかないと収まりがつかないんじゃないの?
東野圭吾は理系ネタも多い作家だけど、時々「この程度で読者は感心して読んでくれるでしょ」みたいな見切りの低さを感じるのが嫌だな。

flying frog