劇場公開日 2018年5月4日

「気象予知能力がなくても、今回カミカゼが吹かないことは読める」ラプラスの魔女 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5気象予知能力がなくても、今回カミカゼが吹かないことは読める

2018年5月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

どうした!三池崇史。主演はダレ? おそらく中途ハンパな大学教授・"青江修介"(桜井翔)ではない。きっと広瀬すずが演じる、"羽原円華"(うはら まどか)だろう。タイトルが「ラプラスの"魔女"」だし。さらに同じく謎の能力者である"甘粕謙人"=福士蒼汰もいる。むしろ事件を追いかけているのは、刑事・中岡祐二(玉木宏)のほうである。

脇役であるはずの櫻井翔をメインに押し出した予告編やプロモーションにミスリードされ、原作未読だと、なにがやりたいのか分からない、謎だらけの映画である。

SFミステリーを目指している?どんな実験か知らないが、脳神経手術後にスーパーコンピューター並みの能力を身につけるって、"もっともらしさ"に欠けている。まだ"X-MEN"のように、先天性の突然変異のほうがフィクションとして夢がある。

ほどなく、計算によって気候変動を読みきり、事件となる現象を起こす能力だということがわかってしまうので、なんらハラハラしない。 登場人物が少ないので、犯人も動機もおおよそモロバレする。

そもそも東野圭吾のミステリーは科学的または理屈っぽいネタが多く、オチが見えてしまうとその伏線設計に意外性がない。東野圭吾ファンにはそれでもいいのかもしれないが、本作のように脚本の構成が悪いと、目も当てられない。

三池監督は撮影が速い、"量産型タイプ"であり、テーマにこだわらず、なんでも撮る。クライアントのオーダーに応えることができる便利屋である。ソツない作品が多いのだが、これはどうしたことか。

残念ながら、これは日本映画界の"忖度(そんたく)"のカタマリである。ジャニーズ事務所への忖度、東宝への忖度、嵐ファンへの忖度…。日本政治のトレンドも"総理大臣への忖度"だが、監督にこれほどの気遣いをさせる映画産業のひずみを感じる作品である。

不思議なのは、映画サイトの評価もちゃんと"悪い"こと。どんな凡庸な作品でも80点(5点満点だと4点)以上の評価がつくのが、"嵐"作品なのに。

気象予知能力がなくても、昨今のジャニーズへの風当たりの強さから、今回はカミカゼが吹かないことは読める(笑)。

(2018/5/11 /TOHOシネマズ日本橋/シネスコ)

Naguy