「世界観を崩すな」EUREKA 交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション S.i.v.aさんの映画レビュー(感想・評価)
世界観を崩すな
こんなにアニメ映画で怒ったのは初めてです。
まあ、エウレカセブンの話の難解さなどはさておくとして。
正直余りにも目に余るクオリティーで途中席を立って帰ろうかと思ったほどでした。
まず作画が悪い。
話の中盤、エウレカがアイリスと逃走劇を広げるわけですが、カットごとに顔が違いすぎて毎回同じ人物なのか疑問に思ったほどです。
そして一番ひどいのが、デューイに追いかけられる時に、車の爆発から逃げる時に明らかに原画だけで作画が抜かれた状態のシーンが挟まれていました。
後半でも作画がガクガクとした動きで地上波でもこんな動きギャグシーンでしか見たことがないと思い、頬杖ついて眉をひそめていました。
戦闘シーンはマシですが、このクオリティのままキャラの顔を維持する努力はして欲しかったです。
次に作中に実際の企業のロゴが出るのがもう本当に興ざめです。
基地の司令室?のパネルに「ROLAND」って名前が出ていて、オーディオメーカーのロゴがシリアスなシーンに出ている上に企業のイメージが頭の中に先行してシーンと全く一致しないわけです。
アネモネとエウレカが話すシーンでも、エウレカがアイリスを奪われて自分を責めるシーンでも、後ろのパネルにEMOTIONのあのモアイの顔が出るわけです。
もうせっかくの雰囲気に、自分が小さい頃に見ていたあのモアイの顔が挟まれるだけで世界観への没入感が一気に消え去るわけです。
あと近未来的な世界観にあのバンダイナムコの暖色系のロゴを出さないで。Blu-rayの場合には必ず削って。
シーンが細かくぱっぱと切り替わり、その分話のテンポ自体はいいものの、キャラの性格や表情もコロコロ変わり、さっきそんな雰囲気でも無かったのになんでそんなに性格変わったのって印象が湧き、感情移入も出来ません。
あと、ラストにキャラの命無駄にしすぎ。
正直死ななくてもいい登場人物が特攻して死ぬシーンは逆シャアを彷彿とさせますが、何というか「そんなスーパーパワーで何とかなったのなら別にこのシーン挟まなくて良かったんじゃないのかな??????」と思ってしまいます。
ガンダムにおける登場人物で主人公の仲間が死ぬというのは、少年の成長や自覚を促すためのエッセンスとして成立していますが、あくまでもこの作品はエウレカとレントンがボーイ・ミーツ・ガールのシナリオ構造の中で成長して変わっていくさまを描くために必要なのであって、話の中での行動原理が理解できない物で納得が行きませんでした。
11/29追記:私は人の死をしっかり描いている作品としてよく富野監督のガンダム作品を例によく上げます。
人の死というのは非常に繊細でかつエネルギーを要するものです。
それは富野監督の場合モブキャラにですら重要視していて、戦争の恐ろしさ、亡くなる直前の爆発された感情、何よりもそれを経て他の仲間が成長したり、悔やんだり、後悔したりする様と言うのを根強く意識しています。
ただ、よりずっと長く生きているキャラと言うのは安易に死なせません。
これは推測でしかありませんが、監督自身の愛情なのか、作品の中核を無くした際の喪失感がダメージが大きいと思っているのかもわかりません。
ただ、主要人物の誰にも気づかれず同等のキャラが退場すると言う運びはしないのです。
タルホが悲しむと言った事も無く終わったのはどうなのと思ってしまうのです。
また、安易に可愛い人気の出そうなぽっと出キャラをさっと描ききらずに退場すると言う事もしません。
私は放映当時ガンダムSEEDで3人娘が退場するシーンを見て愕然としました。話のどこにも別に戦死する理由もされるフラグも立っていなかったからです。
しかもあの三人が亡くなった時に、誰も悲しまない様を見て「何の為に生まれたキャラだったんだ」と思ったのです。
だったら1話限りのキャラでいいですし、Vガンダムであったような「メカニック」の「女の子」が、「旧式機」で「最新戦艦」がパッと出てやられる、というそう言う言葉ではないフラグを立てて退場するべきです。
その点においても、あのアイドル視された6人のパイロットの日常描写であったり、成長物語なども一切ないまま随所に出て特攻して戦死するという扱いは、見ていてただの監督や脚本家のコマでしかないと言うのが見え見えなのです。
追記終わり
ホランドも説明セリフが多いし。
明らかに大河原邦男さんのロボデザインがコクピットのシーンと比較しても浮いてるし。
コクピットのエフェクトはトリガーが関わってるらしいのですが、そのデザインセンスが喧嘩していて、まるでメタルギアソリッドのUIが入った初代ガンダムのような違和感でした。
正直僕はレイトショーで安いじゃないか、とウキウキで見に行ったのですが、これなら1400円を返してもらってさっさと帰って風呂に浴びて寝たかったです。
音響も今YouTubeで観られる冒頭15分は良かったものの、戦闘シーンも明らかに広がりが減ってクオリティに違いを感じました。
全くもってオススメ出来ません。
11/29追記:今更ですが、この作品のエウレカに対する描写とか、大筋のシナリオ運びとか、そもそもエウレカセブンのシナリオ自体が難解であるとか。
そう言う部分は僕は気にしていません。
むしろ他作品ですが映画のテネットですら「ああこう言う雰囲気のこんなシナリオなのね了解」で済むような人間なので。
ただ、この暗いアンダーな雰囲気が漂う作品だからこそクオリティが重要視される傾向になるので、その中で安易にロゴを出したり、顔の形が変わったり、とにかく違和感を出すなといいたいのです。
アニメ作品というのは所詮嘘でしかありません。
嘘の中に本物っぽい、現実でもありそうな何かを織り交ぜる事で嘘が成立するわけです。
ただ、嘘は嘘として丁寧に嘘をつかないと、それは単なる傲慢で楽しませるための嘘とは別次元になります。
この作品においてはロボの戦闘シーンは意外と少ないのですが、戦闘シーンは良くてもロードムービーとなるシナリオ中盤はアイリスとエウレカの二人の喧騒を描いてます。
嘘をつきにくいシーンなのです。
その箇所で雑さを感じたら、いくら名塚さん等声優さんの演技が良かったとしても、違和感を与えます。
違和感を感じるという事は、それは世界観への没入感が削がれ、感情移入もしづらくなり、結果愛せなくなります。
追記終わり