「届け!京都アニメーション」劇場版 響け!ユーフォニアム 届けたいメロディ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
届け!京都アニメーション
吹奏楽に打ち込む高校生たちの青春を描いた同名小説を基にした京都アニメーション作品。
TVシリーズ第2期の再構成劇場版。
久美子と麗奈の関係が描かれつつも、王道タイプの青春ストーリーだった前作。
コンクールで優勝を果たし、夢の全国に一歩近付いた北宇治高校吹奏楽部。
本作もその路線でありつつ、より登場キャラの心情にフォーカス。
3年生で同じユーフォニアム担当、副部長のあすか。
長身、容姿端麗、成績優秀。
ムードメーカーで、皆から頼られる部の纏め役。部長より部長らしい。
そんなあすかがある時見せた冷たい表情が気になって仕方ない久美子。
その訳は…
あすかは“3年生”だ。つまり、最も大事な時期。
裕福な家庭だが、母親と2人暮らし。母親は束縛が強い。
部活をやっている事をよく思っておらず、成績が少しでも下がったら即退部。
ある日久美子は、ヒステリック気味のあすかの母親が顧問に娘の退部を強制的に詰め寄る修羅場を目撃。
部活も休みがちになり、あすかが退部するのではないか…?
部内に動揺が広がる…。
全国を目指す!
そう力強く言ったあすかの言葉は嘘だったのか…? 心変わりしたのか…?
いや、その言葉に偽りは無い。
全国を目指すあすかの動機には、ある理由があった…。
それは個人的な理由。
自分の為に吹奏楽を続けているあすか。
周りは青春の思い出や楽しみの為に吹奏楽をやっているが、あすかにとって吹奏楽を続ける事は、重圧。
学業やプレッシャー、部員からの頼られ…。
一人で背負い込み、大人の対応。
でも、もっと自分に素直になってもいい。だってまだ、高校生だ。
久美子は子供っぽい。
そんな久美子があすかへ思いの丈をぶつけるシーンは胸に迫るものがある。
あすかの吹奏楽への思い、向き合い。
そんなあすかへ久美子が抱く複雑な感情。
久美子が吹奏楽を始めるきっかけとなった姉との関係。
あすかは部を辞めてしまうのか…?
そして、全国大会ーーー。
一応本作も再編集作だが、纏め方が本当に巧く、前作以上。一本の青春作品としても上々。
これで、今年のGWに公開された“2年生編”のリリースを待つのみ。
“3年生編”の製作も決定したとか。
彼女たちが奏でる合奏を、最終楽章まで聴かずにはいられない!
今京アニ作品を見ると、つい思ってしまう。
この素晴らしい作品に携わったスタッフの一体何人が、命を奪われたのだろう、と…。