劇場公開日 2017年10月20日

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「映画の醍醐味!!!」女神の見えざる手 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0映画の醍醐味!!!

2020年4月1日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

興奮

知的

萌える

なぜこの作品が、アカデミー賞他の賞を受賞していないのか?と思うほどの興奮!!!
字幕版も、吹き替え版(GYAO!)もいい。
作品にしっかり向き合い、売りあげだけの為でなく、みんなで本気で作ると、こんないい作品になる。

銃規制をめぐる話。
USAの病理、
利権に群がるものの病理、
”Miss Sloane”の病理、
 が幾重にも絡み合い、先行きの予断を許さずに、ぐいぐい引っ張られる。
 だまし、だまされ、『誰よりも狙われた男』を彷彿とさせるが、こちらの映画は政界を舞台にしているだけあって華やか。最初に出てくるミス・スローンの言葉が回収されるさまも見事。

”女神の見えざる手”=「ロビー活動は予見すること。敵の動きを予見し対策を考えること。勝者は敵の一歩先を読んで計画し…」
 それを双方で繰り返す。
 時には、お互い、法を超えたこともやらかす。この映画はフィクションだが、すでに映画化もされた実際の事件をベースに脚本を作っているとのこと。
 そして、ミス・エリザベス・スローンは、思いもよらむ形で、切り札を切る。
 その緊迫感、その小気味よさ。プロットもよいが、演出・演技・カメラすべてよし。
 1度目の鑑賞では、ぜひその醍醐味を味わってほしい。できれば結末を知らずに見た方が良いが、結末を知っていても見ごたえある。
 そして、2度目の鑑賞は、エリザベスの策略がどこでどう仕掛けられたかを考えながら見ると、その仕込み=プロットの巧みさに唸ってしまう。まさに、「女神の見えざる手」。

信念の女・エリザベス。 なせ、そういう行動をするのかの背景は描いていない。
 戦闘服に身を包み驀進する。15cmヒールを履きこなす姿はパワーの象徴でもあるが、細すぎるヒールはその身の危うさも暗示しているようにみえるのは私だけ?
 ただ、勝つことだけに執着するのなら、なぜ最初のオファーを断ったのだろう。
 ただ、自分のキャリアだけの為なら、なぜあんなことを…。
 すべてを予測し、行うエリザベス。
 自分の行動・影響力の責任を自分一人で負い、目的の為ならば、常人がやらないことをやってのけるエリザベス。
 彼女にとって、”ロビー活動”を通して、策略対象の人心は把握しているが、対象者以外の人たちは目に入っていない?
 命を狙われることは予測できなかった?素人でも考える、当然あり得る展開なのに。
 そして、見捨てない今度の社長。前に会社ならとっくに見捨てられていそうなものだ。
 そして、フォードの言動。
 少しずつ、エリザベスの内面が変わっていく。
 冒頭とラストのエリザベスの佇まいの微妙な違いにほっとする。

USA。銃規制が進まない一因を垣間見た気がする。
 単に、ある団体が力を持っているからだけではないようだ。
 自己防衛のために銃を必要とする国。男性性・強さを求める国。
 私には、臆病さを、銃で補填・防衛しているようにしか見えないのだが。
 そんな世間に一矢報いるのは、女性。あえて女性を主人公にしたとしか思えない。

実際には、ロビー活動している団体は複数あるし、天災・人災をはじめ、様々な要因・利害が絡んでくるのだろうが、
 映画として見やすいように、大手会社と弱小会社の対立に絞ったので、お互いが出し抜かれ、出し抜くさまが緊迫感を産む。
 良心的な弱小会社の中に咲く、何をしでかすかわからないあだ花。この構図も面白い。
 粗さがしをすれば、突っ込みどころはある。人物描写に説明を要するところはあり、エリザベス以外にも、細かい点だが、その行動に???が立つ。
 けれど、細かい部分を省いたことで、全体にスピード感あふれ、予断を許さない緊迫感でクライマックスまで引っ張って行ってくれる。

チャステインさん。
 『オデッセイ』『アメリカンドリーマー』『欲望のヴァージニア』『ヘルプ』と、今作。まったく違った顔を見せる。これぞカメレオン役者。

ストロング氏もいい味出している。

見ごたえのある作品です。

とみいじょん