「アメリカ映画の得意技」女神の見えざる手 シンドラーの手帳さんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカ映画の得意技
もはや一瞬たりとも見逃せない緻密なドラマ作りであるが、アメリカ映画の得意技2つを織り交ぜた非常にゴージャスな脚本であるのが嬉しい。
1つは、「法廷劇」であることだ。
法廷とか裁判というのは、シャークスピア時代の超古典から欧米の主流的演劇要素であるが、特にアメリカ映画では傑作を多く輩出している。本作も被告と裁判官のやり取りが非常にスリリングである。
もう一つは、「逆転劇」であることだ。
法廷劇の多くが逆転劇であるのだが、法廷でのそれと、ロビー活動でのそれを二転三転させる仕組みが新しいと思った。つまり、どちらが、あるいはどちら側が、より役者なのかとうところだ。
映画の構造は、後発の法廷劇をまずは提示させ、時間を過去にずらしたロビー活動とそれに伴うサスペンスとアクシデントを並行して提示し、やがてそれらを収束した形でラストへ持って行くやり方で、途中のヤマ場のアクシデントを機会にヒューマニズムを滲ませるという、極めて緻密なもの。
これには舌をまかざるを得ない。良かった。
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