「ベッソン 最近の凡作続きの中の救世主」ヴァレリアン 千の惑星の救世主 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ベッソン 最近の凡作続きの中の救世主
『フィフス・エレメント』以来となるリュック・ベッソンの本格SF大作。
製作会社ヨーロッパ・コープを大損失させてしまったほど興行的に大コケしてしまったが、ここ最近のベッソン監督作の中ではフツーに面白かったと思う。
それもその筈。
原作は、『スター・ウォーズ』にも影響を与えたとされる、フランスでは超人気のコミック。
長年映画化を夢見てきたベッソンが、SFの魅力とエンタメ性たっぷりに実現させた痛快作。
冒頭、国境を越えて宇宙に進出した人類が異星人と遭遇して数百年。
壮大な宇宙世界が広がり、人類と異星人が共存する“千の惑星の都市”こと超巨大宇宙ステーション“アルファ”は、めくるめく圧倒的なビジュアル。
小道具やアイテムもイマジネーション豊か。
異星人は多種多様。個性的な種族だらけ。
“技術が追い付いた”VFXが、世界観やキャラや設定の創造に本当に素晴らしく使われている。
複雑な役所が多かったデイン・デハーンが、往年のロボット・アニメのような熱血主人公なのがなかなか新鮮。仕事中にも同僚を口説くプレイボーイだが、恋愛表現が苦手。
そんな彼が口説き続ける同僚カーラ・デルヴィーニュの美貌とキュートさは必見! 『スーサイド・スクワッド』でも特殊メイクの下に美しいお顔が見え隠れしていたが、素顔は遥かに魅力的!
仕事上は相棒、プライベートでは恋人同士。
序盤、アロハなラフスタイルで任務をする2人は、まさしく本作のノリを表している。
ヴァレリアンとローレリーヌの、LOVEと冒険のバディ・ムービーでもある。
ストーリーは…
銀河をパトロールするエージェントの2人が、アルファで事件に遭遇。陰謀と銀河存亡の危機に巻き込まれる…。
軍司令官が隠し通す過去のある惨事。
それは、かつての戦争中、惑星一つを滅ぼしてしまった。
僅かに生き残ったその惑星人は、自分たち種族の為に必要なある物を取り戻したいだけ。
普通だったら、多くの仲間と母星を奪った敵に復讐する所だが、その罪を赦す。
が、彼らの存在がバレるのを恐れた軍司令官は、秘密裏に彼らを抹消しようとする。
宇宙に進出しても、人類の敵は人類の愚かさや過ちなのだ。
総じて思ってた以上に面白かったが、全てが最高という訳では無かった。
最初は話に入り込み難かった。
序盤の楽園のような美しい星に住む異星人とその滅亡。これは一体何なんだろう、と。
主人公2人のキャラ設定も最初はいまいちよく分からなかった。
でも、見ていく内に話が繋がり、だんだんと分かってきたが、それはつまり、話に面白味を感じたのは中盤以降からという事。前半、もっと巧く捌ければ…。
スケール大きいエンターテイメントだが、話自体は割とこぢんまりとして漫画的。
キャラも個性的でユニークだったり、ステレオタイプだったり。
『グラン・ブルー』『ニキータ』『レオン』…かつての名作にはさすがに及ばない。同じSFでも『フィフス・エレメント』派。
でも、凡作続きベッソンに幻滅していたが、少なからず本作は救世主になった。