十年のレビュー・感想・評価
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10年待たずしてこの現実、、
2017年の作品か、、2015年から10年後の香港を俯瞰する5人の監督の5つの作品。いうまでもねく、2025年を待つまでもなく、2020年には、この想像を遥かに超える惨事になっている。そのことが、見る前から気がかりで見た後は暗澹とした。
最初の話、エキストラは、インド系の香港人とうだつの上がらないハンパ者の大陸中国人が、まさに今の中国共産党がやるであろう茶番劇のエキストラとして使い捨てられる話。、エキストラたちは自分たちが経済的に生き延びるためにやるかやらないか人生を悩むが、あっけなく幕が降りてしまう。
第二話、冬のセミは、弾圧、汚染、なにかしらの影響で滅びゆく世界の断片を集め標本にしていく物語。そこには希望も美しい思い出もない。なにも残らない、、標本としてのみ残りうるかもしれないそこに賭けるだけ。私の中ではウイグルの行く末と香港の未来が被った。
第三話、方言。普通話で勉強し、中国共産党の教育に乗り身を立てていくしかない香港の子ども。生活が苦しいタクシー運転手も、普通話しか話せない大陸からの運転手には仲間意識もなく秘密警察のようだ。香港人はたしかに英語をそのまま広東語風に訛らせて発音する私たちのカタカナ日本語みたいなのをつかっていたことを若い頃香港からの友人との会話で知り驚いたことを思い出した。イチゴはシドベリーと。返還以降ずっと学生、芸術家は闘ってきたが中国共産党の前では常に無力。香港でも、チベットやウイグルと全く同じように言葉も文化も思想も奪われている。
第四話焼身自殺者、単刀直入に抗議する。激烈だがもっとも静かな抗議だと、かつては韓国の学生、そのあとはチベット人の常套レジスタンス。心に棘が突き刺さる思い。第一話と同じくここではインド系の香港人が登場し、ウイグルやチベットのような民族問題とは認識されていない香港だかもはや自由都市香港の多様なローカル性ダイバーシティ溢れるローカル性も忘れてはならないと、そして元宗主国の英国のみならず世界は明らかに約束を反故にした中国に対私抗議をせず無関心だ。無関心がどんなことを引き起こしているか。奇しくももっとも静かな抗議と述べられた焼身自殺は、、文革、天安門で辛酸を嘗め人生の理想ら尊厳を踏みなじられたであろう世代の最期の静かな強いメッセージ。最後第五話、地元産の卵。悲しいかな毎日食べるものさえも押し付けられる、地元産の卵を食べ育った子は、父も言いなりになるな自分の頭で考えろ、と言い聞かせる父の心配をよそに、清く正しい栄養を心身に行き渡らせこどもなりに強い意志を持っている。焼身自殺の話にも登場するが子どもは皆ネオ紅衛兵として動員され思想教育されている。
未来のことを描いた映画、物語ということを忘れ、ドキュメンタリーベースの作品かとつい思ってしまう。
鑑賞中のメモ
標本 人類の愚かさ
広東語
チベット、ウイグル、と同じレベル、国際社会の無関心、文化大革命や天安門事件を知る老婆の独立運動
リトルandニュー紅衛兵、ネオナチにならいネオ紅衛兵とでも?進撃の巨人や地獄の黙示録のポスター、自由文化の象徴、地元産の卵にも自由自決精神、ライフスタイルと信念
返還前の香港を忘れませんように
7月7日七夕に見た映画
悲しくて苦しくなる映画。自分は逆らわずに流される人間なんだろうなと思うけどそんな自分も情けなく思う。狩られた言葉が絶滅した後に生まれた私は今改めて獲得したいと強く望んでいる。
コミック「ドラえもん」も禁書なのか?!
1.「エキストラ」 監督:クォック・ジョン
真愛連ラム党首と金民党ヨン党首の二人が主催するメーデーの集会。裏では拳銃を持った男が二人。そして警察の幹部たちの雑談・・・警察はテロを起こさせて“国家安全条例”を成立させようと企んでいたのだ。拳銃を持った男は裏社会の下っ端で、テロを起こせば死刑も覚悟しなければならない状況で、インドへ行こうなどと話し合ってるのだ。
テロは自作自演!なんだか日本でも似たようなテロ対策特別措置法の成立があったけど、ここまでの演出はなかったな。結局は背景に中国共産党があり、市民を取り締まることが容易になるということ。その片棒を警察が担っているのだ。
全編モノクロで迫力があるし、これは香港だけの問題じゃない!と痛感。行動のみならず言論まで統制されるファシズムを感じる・・・
2.「冬のセミ」 監督:ウォン・フェイパン
壊れた建物内で男女二人が黙々と標本を作っている。現在生存する生物は870万種。それはかつて地球に存在した生物の2%に過ぎないというウンチクも語られ、宇宙の映像によって神秘的に表現される。
人間も標本にしなければならない!外の状況がよくわからないのでSFチックな内容も理解しづらい。
3.「方言」 監督:ジェボンズ・アウ
普通話の普及政策により、タクシー運転手も広東語だけじゃなく普通話の試験が課せられた。落ちると空港や港に客を運ぶことが禁止となり、自由に稼ぐことができなくなる。言葉の違いがよくわからないけど、日本で言えば標準語と関西弁の違いみたいなものだろうか?
親子の会話でさえ発音が違い、コミュニケーションが取りにくくなる。これも中国と香港の文化が壊されていくことに他ならないのだろう。タクシーだけに身につまされる話だった。
4.「焼身自殺者」 監督:キウィ・チョウ
2025年、英領事館前で焼身自殺した人物がいた。目撃者もおらず、誰だったのか発表もできない。しかし、独立運動の信念を持ちながら獄中死したオウヨン青年の後追い自殺じゃないかと思われた。恋人カレンがもしかしたら自殺したんじゃないかと心配する彼氏。様々な憶測が飛び交う中、自殺者の追悼集会が開かれる。
イギリス頼りという考えや、ドキュメンタリータッチで描かれるストーリーは案外面白くなかったけど、ラストシーンは秀逸だ!ちょっと涙が出る・・・
5.「地元産の卵」 監督:ン・ガーリョン
2025年、香港最後の養鶏場が閉鎖される。息子のチョンは知識と技術を買われて台湾に渡る。雑貨屋の店主は諜報活動をする少年団が写真を撮り、通報すると言われ驚く。「地元」という言葉が禁止用語リストに載っていたのだ。
この少年団はナチスのヒトラーユーゲントみたいな恰好でおぞましい。ターゲットになったのは書店がメインで、禁書を摘発しようというのだ。本屋は少年団に卵を投げられるなどの被害を受けるのだが、ミン少年のとった行動がとてもよかった・・・禁書に対する静かな抵抗。「進撃の巨人」など、日本のコミックも登場するのが印象的。焚書坑儒まで思い出した。
全体的に香港の独立性、自治などを取り扱ったものが多く、中国共産党批判の内容が中心だ。香港の立ち位置も理解できるし、2047年以降を心配する気持ちもわかる。すべては若者世代にかかっている。どうなるのだろうか・・・
香港の10年後
2015年から10年後、2025年の話。でも「エキストラ」「冬のセミ」は2025年ではないですよね。
後の3作品はあり得そうな話で興味深かった。
特に「焼身自殺者」は強烈な印象。2019年からの香港民主化デモ、2020年になってもまだ続いている。(日本ではあまり報道されなくなっているけど)映画では香港の独立とイギリスに対する反感もデモの目的であったりと、今の香港デモとの違いはあるが、まるで予言していたようでちょっと恐ろしく感じた。はやく安心して旅行に行ける香港に戻ってほしい。
近未来の香港としてあり得る話
第3話「方言」は面白かった。急には起きないだろうが、描かれたような形で(つまり、政治ではなく経済的必要性で)、世代交代とともに、少しづつ地方語が駆逐されていくのかもしれない。
第4話「焼身自殺者」は、香港で起きるかどうかは分からない。しかし、チベットでは、非暴力主義の抵抗として、実際に今でも起きていることで、若い人も少なからずいるという。
第5話「地元産の卵」は、“言葉狩り”の状況も描写され、ハッとさせられた。同じ全体主義体制でも、ソ連では地域性や民族性は尊重されていたようだが、今の中国政府の極度に中央統制的なやり方を見れば、現実になっても少しもおかしくない。
上記の3作は、近未来の香港としてあり得る話であって、とても興味深かった。
気になったシーン。
「焼身自殺者」
劇中、代々香港に暮らし広東語を母語並に話すインドパキスタン系の女子学生に向かって「国へ帰れ!」と罵倒する姿はすでに日本でも似たことを目にしている。SFじゃなくリアルなノンフィクションに変わってしまった現実。
とても面白かった
5話オムニバスで、それぞれ全然違うスタイルだから全く飽きさせない。
自分達が暮らしてきた街の行く末はどうなるのか、中国本土に呑み込まれてこのままでは酷いことになっていくのではないか?そんな思いの中、それでもしたたかに逞しくやっていかねば、という香港人の気概を感じる。
地域のいろんな社会運動があって、そういった問題意識を表現する形態の一つとして映画が作られる。そういう流れはどの国にもあると思うが、香港映画でそういった作品に出くわすと特に、いつものような娯楽要素が薄いにも関わらず面白く見れるのが不思議だ。
香港人の不安と恐怖
このオムニバスは、短編ごとの映画としての出来不出来があるものの、通底した当局への疑念が露だ。
最初の短編「エキストラ」では、市民の不安を煽ることを目的としたテロ行為がでっち上げあげられる。
誰も死なない筋書きをうそぶく陰謀の主。しかし、それを信じて実行犯の役をさせられた者は、警護の警察に即時射殺される。
しかも、もしも、この計画の銃撃の対象が間違って死んでも、首謀者たちには痛くも痒くもない。共産党以外の政党の要人なら、むしろいなくなったほうがいいから。
最後から二つ目の短編「焼身自殺者」では、これまでの天安門事件などの焼身自殺者が当局の謀によるものではなかったかという疑念に触れている。
弾圧するだけではなく、それへの抵抗ですらも、当局が一枚噛んでいるのではないか。この、もはや何も信じることができない、香港人の焦りと不安。
文化大革命のような混乱を再び現出されれば、小さな香港社会などあっという間に荒野に変わってしまう。そのことへの恐怖が表現された最後の短編「地元産の卵」。その少年隊が、ねっとりとした恐れを残す。
とはいえ、香港がイギリスの植民地であったことは、悠久の中華世界の歴史に残る汚辱の点であることには違いない。
その歴史への可逆的な言説を絶対に認めまいとする、中国の支配層の言動を批判できる者もいない。
実は現在?
10年後の設定ではあるけれど、今あってもおかしくないシーンばかりなのではないか。現実をちょこっと誇張したらこうなるのではないかと思ってしまった。
各ストーリーは地味で面白味にかけるかもしれないが、それだけ身近に起こりつつあることなのだろう。ぬるま湯の中の蛙って、こういうことなのだろうなと思える。
未来が現在の延長線上にあるのなら
2015年から見た10年後すなわち2025年の香港を描いた5本の短編のオムニバス。
いわゆる「テロ対策法」、北京語の普及と強制、独立運動、紅衛兵もどき…とテーマは様々だが、単にディストピアを描いて終わり、というだけでなく、中国本土の圧力が強まる中での危機感と抵抗の意志が見えてくる。
本当は、香港に関する知識がある程度あったり、北京語と広東語の聞き分けができれば、もっと深いところで理解できるのだろうけど、そうでない私にも感じるところはあった。
憂い
エキストラ
オチは良かったけれどそれ以外の内容に深みや大した意味が感じられない。
冬のセミ
感傷的な内容ではあるけれど劇的なものはなく設定だけが面白い印象。ただ、十年後というには極端過ぎ。
方言
バカらしくも実際にありそうな話をコミカルに軽くみせており面白い。
焼身自殺者
2014年に反政府デモがあったし十年とは言わずもっと早く実際に起こり得る話。リアリティはあるけれど、現地人ではない自分には刺さらなかった。
地元産の卵
皮肉っぽくかなり行き過ぎた内容だけど、ゲシュタポの様な少年団の存在が可愛らしく軽くみせてくれる。
5作品ともかなり悲観的だったり反体制を訴えたりと、イギリスから返還されて香港の人々は情勢にかなり不安と不満があるのがみてとれる。
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