「猫が主役」旅猫リポート 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
猫が主役
予告編の通り、飼い猫の行き先を中心にした終活がテーマの作品である。ともすれば暗くなり勝ちなプロットだが、高畑充希のあっけらかんと明るい声が、悲壮感を相対化している。人間にとっては重く苦しい死というテーマも、動物にとっては近しい日常なのだ。
本作は猫のモノローグあっての作品で、それがなかったら自分の死期を知った好青年が昔の友人に会いに行って昔を思い出す、ゆっくりした走馬灯映画になるところであった。そういう意味では猫が主役だったと言ってもいい。
福士蒼汰は深くものを考えない能天気な楽天家を演じさせると、とても上手い。破顔一笑という言葉を聞くとこの人の笑顔が思い浮かぶほどだ。本作品の、いい人の極北みたいな役にはぴったりだった。
竹内結子は「あすか」の頃の演技がいまだにそのままだが、役によってはそういう演技が求められることがある。本作品の人のいい甥の人のいい叔母の役はまさにそういう役だった。
世界観という点では必ずしも掘り下げた映画ではなかったが、こういった普通にいい人たちが登場する映画は、不寛容が蔓延したいまの世の中にあっては、一服の清涼剤のように清々しい感動をもたらすものだ。この作品を観て猫を飼いたくなった人もいると思う。
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