南瓜とマヨネーズのレビュー・感想・評価
全92件中、81~92件目を表示
ラストシーンで歌う太賀の歌声に、二人のすべてを許してしまう、そんな気分。
だらけたミュージシャン崩れと、そんな男にかいがいしく貢ぐ女。
そんな対比であったこのカップルが、なにげないきっかけから気持ちが離れていく。それは、立場やモチベーションが逆転したとも思えた。セイイチは、口だけでやる気のない男だと蔑んでいたのに、むしろ誠実で辛抱強い一面があることに、ツチダだけでなく観ているこっちも感心させられたころに、ラストシーン。
いい曲だった。素朴で、優しさが溢れていて。自分は裏切ってしまったんだと気付いたツチダの涙が、愛おしく感じた。
ゼツミョーな間(ま)を見事に再現した、環境音と音楽
うーん、いい映画だ。原作のゼツミョーな間(ま)を見事に再現した、冨永昌敬監督の計算されつくされた技量に唸る。間(ま)があるのに無駄が一切ない。余分が削ぎ落とされたシンプルな作品である。
原作は、魚喃キリコ(なななん きりこ)の1998年のマンガ。
主人公ツチダ(臼田あさ美)は、プロのミュージシャンを目指す恋人せいいち(太賀)と暮らしている。せいいちは、スランプで仕事もせず、かといって音楽を書くわけでもなく、ツチダが生活を支えている。せいいちの夢のためなら、どんな苦労も惜しまないと思い込んでいる。
生活のためキャバクラで働きはじめたツチダは、客の要求を断りきれず、金銭だけの愛人関係になってしまうが、せいいちにバレてしまう。せいいちは心を入れ替えてがむしゃらにバイトの掛け持ちを始めるが、そんなときツチダはかつての恋人・ハギオ(オダギリジョー)と再会する。
"せいいちは大好きだけど、やっぱりハギオも愛している・・・男に尽くすことで自己満足してしまうツチダ。
20代後半女性のやるせない恋愛模様を、淡々と描いていく。原作が名作と言われるゆえんは、相手本位の恋愛関係において、"好き"とか"愛"とかを見失った迷子状態は、意外とありがちなのかも。女性読者に共感を生む。
原作は、少しの会話と主人公のモノローグが中心で、マンガは挿し絵のように進んでいく私小説っぽい作品なので、そのままでは日常風景と単調なナレーション映画になりそうで、まさに間抜けになる。
対して、冨永監督の練られたセリフ(脚本)、厳選されたシーンとカット構成によって浮き彫りにされるキャラクター描写。
特徴的なのは、シーンを埋め尽くす様々な音。何気なく見ていると気づかないが、あきらかに同録のはずなのに、明瞭なセリフと周辺の環境音が効果的に共存している。これこそ山本タカアキの音である(録音技師)。
そして、"やくしまるえつこ"作曲の映画音楽との高次元なコラボレーション。書き下ろしのエンディング曲が突き抜けて秀逸だ。この曲も当然、原作にあるわけがない要素だ。
音がツマっている、びっしり。だからエンドロールの"無音"がものすごいコントラストを得る。中心となる3人が生き生きと蘇り、原作が持つ、切ない空気感がそこにある。これは小品だけど逸品。
(2017/11/15 /新宿武蔵野館/シネスコ)
ごめんなさい、おじさんには分かりませんでした...
今時の若者ってこんな感じなのかと思い知りました。ある意味本能に従って生きているだけなのでしょうけど、刹那の快楽・満足に振り回されているようには感じないのかな?こんな時代にしたのも今の老人・中高年がいけなかったのでしょうけど、何か切なかったです。
あの頃の永遠
観た。
学生時代読んだり体感した作品。
好みではないのだけれど、オダギリジョーって役者としてすごいんだなと改めて感じました。
一人だけ出演者の中で別格にオーラ、というか演技に色があります。
私はハギオにいくらでも貢いでしまいそうだ…。
私が一方的に好きだった人には会いたくない。
神様に会いたくない。みたいな感じ。
だって、すごく太っていたりハゲていたら嫌だし、
今彼女なんかいたら立ち直れない。
そういう意味ではハギオはありがたいし、「あの頃」描いていた永遠に近い。
でもそんなハギオもいつか結婚したり子供ができたりするんだろうか?
そんな普通の幸せを受け入れる日がくるのかな?
いつもライブハウスやバンドマン出てくる作品をみると場所どこかなーと考えてしまうけど今回は下北でした。
重い女のブルース
実にジメっとして暗い上に考察しやすい、大変面白い映画でした。
何しろ人物描写が丁寧で、リアリティがあります。それだけで観応えありました。
ツチダは重い女ですね。せいちゃんを愛してる、って言いながら、自分が望んでいるせいちゃんしか愛していない。なので、自分の願望ばかりを相手に押しつける。
「せいちゃんは曲作っていればいいの!」って、せいちゃんはお前の所有物じゃねーぞ、って感じです。せいちゃんのため、と言う名の自己満のために愛人になった上に、そのことについての文句を言われると逆ギレとか、重い!
せいちゃんはツチダといると自分自身の主体性が殺されるため、重く感じてくるのだと思います。愛というよりも、支配ー被支配の関係です。カップルだけど、毒親と子どもの関係にダブります。
せいちゃんが働き始めると、ツチダにとって「私の望むせいちゃん」じゃなくなるので、関係にもヒビが入ってきます。
そこを突いてくるのがプロのヒモ・ハギオ。このハギオの完成度は高いですね!女性に寄生して生きるために無駄なものがすべて削ぎ落とされているような、ある種の洗練さを感じました。ルックスも含め、ヒモ男の最終進化形とでも言えそうな。本当にさりげなく金を搾取するところとか、マジで名人芸。またオダジョーが役にハマりすぎていて、ハギオが登場するたびにクスクスと笑ってしまいました。
せいちゃんはツチダの支配下から脱出し、順調に成長しますが、ツチダは最後まで変わらず重い女のまま。それが、この映画で描かれた哀しさなのかな、と感じました。あんなに辛い恋をしても変われないツチダは哀しい。
せいちゃんがパーカッション叩きながら歌った最後の歌は、そんなツチダの哀しみを包み込むような慈愛に満ちており、心がグッと動きました。歌詞も良かった。本当にツチダはこの先も迷子のままだしね。
ツチダを演じた臼田あさ美は予想外に素晴らしかったです。甘ったるくて重いけど、尖っていない主人公を見事に好演していたように思います。
あと、バンドのボーカルの子がなかなか魅力ありました。グチャグチャしているマヌケなメンズどもとは一線を引いて、バーベキューでもさっさとひとりでチャリで帰るところとか、賢さを感じました。
静謐なエンドロールも余韻に浸れて良かったです。
ザ・サブカルチャー
何か映画観たいなーと思ってたところ、この週末に公開されたばかりのこの映画を観ることにしました。
まずその女性客の多さにビックリ。おっさんがビールとからあげ食べながら観てるのが憚られる感じ。まあ、全部食べたけど。
その後女性主人公の恋愛に対する悩みを赤裸々に描いている内容を観て、女性客の多さに納得。造詣はあまり深くないが、いわゆる下北沢とかサブカルチャーが好きな人にはドンピシャな内容なんだろうなと思いながら鑑賞しました。
それでも若者の頽廃的な生活を淡々と描く様に、なるほど、これはこれで味があるなと、シンプルに楽しめました。からあげは全部食べたけど。
要するに、コアな映画ファンほど楽しめる作品だと思いました。
切ないなぁ
何してるんだろう私って、何度も繰り返すツチダ
冷静になれば自分がバカなことしてると気付いてしまう。
まるでそれを避けるみたいに
自分のためには頑張れないけど、大切な相手のためなら何でもできちゃうことあるよね。
切なくて、でも強くなれる。
終わった後、何とも言えない涙が出ました。
悲しいでもなく、辛いとか、悔しいとかじゃなく、ツチダに頑張ったね、お疲れ様の気持ちなのかな
「好き」が凝縮されてる作品
期待通りで冨永昌敬監督も外れなしだ。
邦画、単館映画、中央線(中野〜吉祥寺間)、ヴィレッジバンガード、下北沢が好きな人に受け入れられやすい作品だね、魚喃キリコだしね…。
とりあえずめっちゃ面白かった。勿論、アクションやファンタジーやコメディ、ラブ、問題提起作品とかヒューマンドラマとかとは違う面白さだけど、こういう映画が観たい人が観たら120%心が満たされる映画だった。本当めっちゃ良いよ。私だけの意見としては原作よりも好きだなー。「ストロベリーショートケイクス」も昔実写化されてたけど比較対象にならないぐらいこっちのほうがいい。(でも「ストロベリー〜」を撮った矢崎仁司監督が10年後に撮った「無伴奏」はとても面白かった)
リアルな若者たちの日常を描くストーリーって多分難しいし、分かりやすい面白さとか特出した話題性が無い内容をここまでの作品にしちゃうの凄い。
役者もみんな良かった、みんな輝いてた。
臼田あさ美、昔存在を知った時から、顔も声も雰囲気も音楽・映画・本の趣味も凄く好みだと思ってたけど、女優の活動は「…」という感想だった。「問題のあるレストラン」「グッド・ストライプス」「架空OL日記」のあたりからなんかやたらと良くなって、臼田熱が再発しつつの今日の作品で、本当に良いなこの人はと。(あとこないだ美容院で読んだ何かの雑誌の中の岡村靖幸の連載で、オカモトレイジと3人で結婚の経緯や結婚後の事が細かく書いてあったけど、めちゃくちゃ素敵夫婦だった、というより「こりゃ結婚しますわこの2人」って感じだった。)
太賀もいつも通り上手くて、せいちゃんという男のダメな部分・良い部分が伝わってきたし、あるシーンでの歌がとても良かった。昔菅田将暉の情熱大陸で太賀と若葉竜也と菅田将暉がバンドやろう…って場面があったけど、その後ひとりひとりCD出したり劇中歌うたったり音楽な活動してて、みんな好きだわと思った笑。んで今回太賀と若葉竜也は昔一緒にバンドやってた設定だったから、そこは萌えたよ。役者さんが自分の得意分野や好きな事を活かした仕事してると観てるこっちも楽しくて嬉しい気分になるからいいね。
そして最強男オダギリジョーですよ…
オダギリジョーのハギオは、彼の言動ひとつひとつ全て、アホほど惹きつけられてドキドキして、ダメ男ではあるけど1番女子にモテる奴やないか!と100回くらいつっこみつつ、オダギリジョ〜異常〜というジョイマンのネタが私の頭の中にこだまして煩かったほど笑。
基本ちょっと冷たく、自分の予定と気分で常に動いてて、でもたまにさらっと優しい口調とか可愛らしい事言って惑わしてくる自分では一切悪気無い魔性さ+自分の事好き好き系女子は興味持たないオシャレ系男子…
→この人達にかき乱された女性はきっと多くいると思うし、この生き物って一体なんなんだろう笑、とよく思う。(勿論女性の年代によっちゃ別にここに萌えない年代はいる。)
オダギリジョーの元々の雰囲気と演技力で寸分狂わずハギオという最強男が出来上がってて圧巻だった。オダギリジョー、顔も才能も最高だ!笑
(別件ですがこないだの「鶴瓶の家族に乾杯」でムロツヨシがゲストで出た時、旅先で出会った人に”twitterでカタカナの有名人がこの街にいると聞いて探してました笑”と言われたのに対し、”オダギリジョーじゃなくてすみません笑”と速攻で切り返したムロツヨシの答えが100点満点過ぎて、ムロツヨシはムロツヨシで大好きだなと思いました…)
この映画も私の「好き」が凝縮されている映画でした。
★冨永監督の次回作「素敵なダイナマイトスキャンダル」もキャスト・ストーリーからしてめちゃくちゃ期待大!久々に「乱暴と待機」も観たい、観よう。みんな観よう。
全92件中、81~92件目を表示