「マフィアのヒットマンから見た「アメリカ現代史」」アイリッシュマン 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
マフィアのヒットマンから見た「アメリカ現代史」
マーティン・スコセッシはフランク・シーランの人生と、
ジミー・ホッファ殺害への関与の疑いについて
映画にすることに、長年興味を抱いていた。
映画「アイリッシュマン」の原作はチャールズ・ブラントの
ノンフィクション小説、
「I H ead You Paint Hous es」を原作としている。
出演者は全員実在した人物です。
映画の中で、シーランと仲間たちが「ペンキを塗る」とよく言っている。
これはシーランの父親が塗装業をしていたことに掛けていて、
「殺人により血が流れて、標的の家の壁が血で汚れる」
それがつまりペンキ塗りは殺人の暗喩である。
また題名の「アイリッシュマン」はシーランの父親がアイルランド系の
移民であることから。
映画は冒頭でシーランが車椅子で、老人ホームからはじまる。
そして若い頃からの回想をしてゆく手法だ。
フランク・シーランという男。
マフィアの汚れ仕事の実行役でこの映画の主人公ですが、
20代の第二次世界大戦でも、非常に残虐性を発揮していて、
戦時中に人間形成がされていたのかも知れない。
フランク・シーランを演じるロバート・デ・ニーロ。
もう1人は、全米トラック協会組合員100万人を率いる委員長
ジミー・ホッファを、アル・パチーノが演じている。
そしてシーランに汚れ仕事を命じるマフィアの親分ブファリーノ・ラッセルを、
ジョー・ペシが演じている。
デ・ニーロとアル・パチーノとジョー・ペシの3人はCGによるメイクで
若返らせているので、
30代や40代から50代の頃の3人に会えたような喜びがある。
パチーノ演じるホッファは、当時、大統領の次に人気があったそうだ。
たしかに本物の写真をみてもスマートで美しい。
組合員にとって給料を上げ、待遇を良くする男・・だからヒーローだ。
アル・パチーノの演説シーンは人を惹きつける。
組合員同様に観客も魅せられる。
しかし組合員の年金資金を勝手に流用したり、権力を持ちすぎると
弊害も出る。
そこで汚れ仕事をシーランが請け負う。
ホッファはシーランを気に入って組合支部を任せるほどの親友になる。
(そんな時期もあった・・ということだ)
大統領にケネディがなると弟のロバート・ケネディの目の敵にされて、
ホッファのロバートへの憎しみは画面を通しても痛いほど伝わってくる。
ジョン・F・ケネディの暗殺をテレビで見つめるホッファの微妙な表情。
(内心で何を思ったか?)
印象的なシーンでは、トラックに代わって台頭して、
チカラをつけて来たタクシー運転手業界。
駐車されるイエローキャブが何百台も爆破されるシーン。
アメリカの黒歴史・・・驚くほど暴力的で声も出ない。
ホッファはシーランを気に入って労組支部を任せる程の親友だったが、
しかしホッファは1975年7月30日愛車を残して失踪する。
シーランがホッファを殺したと告白しているが、拉致した者がいて、
殺人の実行を行ったのか?
自白の信憑性も疑われるし、
アメリカ最大の「未解決事件」と呼ばれているが、謎が多い。
ホッファはアメリカ政府にとっても目障りな邪魔な存在だったと言う。
出る釘は打たれる!!
それにしてもフランク・シーラン。
あれ程の汚れ仕事(殺人)を侵しながら、最後は天命を全うして
老人ホームでなくなるとは!!
デ・ニーロの若造りも見所だったが、ラストの衰え果てた足腰の演技。
やり過ぎな程リアルで、やはり笑いを堪えた。
☆☆
製作費1億6千万ドルと言われる「アイリッシュマン」
マーティン・スコセッシ監督。
主演、ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノ。
210分の上映時間。3時間半です。
私がNetflixに入会した理由だったのに、やっと観ることが出来ました。
1億6千万ドルもの製作費を惜しげもなく供給したNetflix。
コロナ禍だったとはいえ凄い会社です。
スコセッシ監督は今年公開の作品が既に完成しているようです。
ディカプリオとのタッグ。デ・ニーロも出演。
老いを知りませんね。
楽しみです。
> 私がNetflix入会した理由だったのに
そうだったんですね!
この映画も観てもらえて、きっとホッとしていることでしょうに(笑)
たしかにNetflixは金がある。それを正しく使ってる気がします。当たろうが当たるまいが、機会を広げているという意味で。
琥珀糖さん、いつも共感ありがとうございます。筆不精ですいません。こんなマニアックな作品で共感いただいて嬉しいです。CGで若返らせているとは言え、デ・ニーロが商店のオヤジをタコ殴りするシーンなんかは、昔ながら凶暴さまんまで感服しました。役者のチカラもすごいですね。
実在のシリアル・キラーを描くスコセッシ×ディカプリオの新作Netflix映画、楽しみですね。
おそらくアカデミー賞を狙うでしょうから、年末辺りの配信になるでしょうか。