劇場公開日 2019年11月15日

「アメリカ式栄枯盛衰、諸行無常」アイリッシュマン しずるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5アメリカ式栄枯盛衰、諸行無常

2019年12月26日
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マフィアものヤクザものが苦手なので、不得意ジャンルで3時間半はキツイかな~と懸念しながらの鑑賞だったが、ケネディ暗殺などの歴史事件と絡めて進んでいくので、意外に興味深く見られた。私は当時のアメリカの情勢や、映画の元ネタになった事件に疎いので、詳しければ更に楽しめたかも。
暴力表現は勿論たくさんあるが、身構えていた程エグい描写がなかったのも有り難かった。
相変わらず役者に頓着しない性分なので、今回も、観賞後に調べていてようやく、あ、あれがロバート・デ・ニーロでアル・パチーノでしたか…、道理で圧が強いと思った、てな有り様ですんません。今時は映像技術で若さも操れるのね。
3つの時系列が入り乱れて登場するので、しつかり考えながら筋を追わないと少し解り辛かった。

見終わって抱いたのは、マフィアだろうと女王だろうと、終いは老いてヨボヨボになるのだよなぁという事と、所詮政治も経済も、金と縄張りと面子と意地の張り合い、くっだらねぇなという思い。正に諸行無常。
しかしまあ、善行を働いて心の満足感と平穏を得るのも、現世で世俗の悦びを貪るのも、自らの選択次第、どちらもあの世までは持って行けない。決して後悔しない、全てのリスクを呑み込む覚悟で生きるなら、個人の目線で見れば、どちらも大差は無いのかも知れない。
けれども、何も恥じず、悔いずに逝けた者は誰かいたかな?

殺人と家族への愛情は矛盾しない。「遺族は知り合いじゃない」しね。
けれど娘に知られたくなかったという事は、後ろめたさがあったんだろうに。
仕事と家庭でのペルソナの違いは、誰にも多かれ少なかれあるものだが、何処にいても誰に対しても、同じく胸を張れる自分を貫くのは難しい。

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しずる