エジソンズ・ゲーム : 特集
天才発明家VSカリスマ実業家 スコセッシ製作総指揮で描くスタイリッシュな電流戦争!
カンバーバッチ&トムホVSシャノン&ホルトのバトルがアツい!
発明王エジソンとライバルたちが繰り広げた“ビジネスバトル”。現在の我々の生活を支える“電気”の供給方式をめぐって勃発した “電流戦争”である。
直流と交流、どちらが優れているか……。彼らの戦いがあったからこそ、我々は家庭で電気を利用し、豊かな暮らしを送ることができている。そんな歴史の一大トピックが、「エジソンズ・ゲーム」(6月19日公開)として映画化された。
製作総指揮は、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」「アイリッシュマン」などで知られる巨匠マーティン・スコセッシ。物語は興味深く、そして映像はひたすらにスタイリッシュだ。
主演は「ドクター・ストレンジ」などのベネディクト・カンバーバッチが務め、共演陣にはトム・ホランドら多士済々。全方位に隙がない良作、その魅力を詳述していこう。
天才エジソン VS カリスマ実業家ウェスティングハウスの壮絶バトルを描く
天才発明家とカリスマ実業家によるビジネスバトルを、スリリングに描き出す本作。スコセッシが製作総指揮に名を連ねているだけに、クオリティは折り紙付きだ。
一時はお蔵入りの危機に瀕するなど、完成までの道のりには困難が連続した。その過程は こちらの記事に詳しいので、興味のある読者は目を通してみてほしい。
◇生活に欠かせない“電気” その背景には、知られざるバトルがあった――
まずは物語を紹介しておこう。
テレビ、パソコン、エアコンなど、我々の生活のあらゆる局面を支えてくれている電気が、どのようにして世間一般に供給されるようになったのか? そこにはなんと、“発明王”トーマス・エジソンと“豪腕実業家”ジョージ・ウェスティングハウスによる、壮絶なバトルがあった。
19世紀、アメリカは電気の誕生による新時代を迎えようとしていた。白熱電球の事業化を成功させた天才発明家エジソンは、“直流方式”での家庭用電気の普及を目指す。一方で空気ブレーキの事業化で財を成した実業家ウェスティングハウスは、対立する“交流方式”での普及を目指していた。
エジソンは「私の直流方式は安全で扱いやすい。交流は強力すぎて危険であり、感電死を招く」と主張。対するウェスティングハウスは「直流は大量の発電機が必要なので高コスト。私の交流方式は1基の発電機で遠方まで電気を送れるため低コスト」と主張した。
2人は真っ向から衝突し、「どちらの方式が多くシェアを占めるか」をめぐって激しく敵対。やがて相手を蹴落とすためのネガティブキャンペーンや、裏工作などが横行していく……。ここに、世紀の“電流戦争”が勃発したのである。
◇あらゆるショットがバチバチに極まる! そのクオリティに刮目せよ
2015年のサンダンス映画祭でグランプリ&観客賞に輝いた「ぼくとアールと彼女のさよなら」のアルフォンソ・ゴメス=レホン監督が、スコセッシが示した指針をもとに、スタイリッシュなカッティングを構築。下記の予告編を見てもらえればよくわかるが、惚れ惚れするような映像世界を紡いでいる。
作品のテイストは「ウルフ・オブ・ウォールストリート」などの、スリルと疾走感に満ちたビジネス映画と似ている。また物語の背景は、アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズと、マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツによるライバル関係とも似通っているので、ビジネスパーソンにとっても興味深いはずだ。
キャストには “MCUのスター”が結集!
カンバーバッチ×トムホのバディが対するのは、シャノン×ホルトの実力派!
キャストには綺羅星のごときスターが集った。彼らの過去作をよく知る映画ファンは、その組み合わせに胸が熱くなることだろう。
◇ベネディクト・カンバーバッチ:狂気的で傲慢なエジソン像に挑戦
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)で重要な役割を果たす「ドクター・ストレンジ」で、タイトルロールを演じたカンバーバッチ。本作ではエジソンに扮しているが、不屈の努力を続けた“歴史上の偉人”というイメージではなく、“狂気の発明家”という側面を強く打ち出している。
勝つためには汚い手段もためらわず、大統領の依頼でさえ「気に入らない」と断るほど傲慢。「産業の父」とも称されたエジソンの“別の顔”や、人生の光と影をも体現してみせている。
◇トム・ホランド:エジソンを支える秘書を真摯に好演
「スパイダーマン ホームカミング」のトム・ホランドが、エジソンを支える秘書インサル役で出演。エジソンの腹心の友でもあり、彼に苦言を呈することができる唯一の存在でもある。
カンバーバッチとは「アベンジャーズ」シリーズで共演。本作では、敬意と信頼がにじむ会話劇を繰り広げる。MCUファンは、「もしもピーター・パーカー(ホランド)が、トニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)ではなくストレンジと師弟だったら、こんな感じだったのかな」と思いを馳せて鑑賞するのも一興だ。
◇マイケル・シャノン:カリスマ実業家の苦悩を重厚に表現
「シェイプ・オブ・ウォーター」などのマイケル・シャノンが、ウェスティングハウスを重厚感たっぷりに熱演。エジソンの妨害工作にも動じることなく、パワフルに勢力図を広げていく様は見ものだ。
人としての器の大きさや、経営者としての優れた手腕を「これでもか」と見せつけるため、物語の中盤からは、次第に堕ちていくエジソンとのコントラストがすさまじい。鑑賞者に「どっちが主人公だっけ?」と思わせるほどの活躍ぶりで、ソリッドな演技合戦を盛り上げていく。
◇ニコラス・ホルト:天衣無縫の天才を縦横無尽に体現
子役時代に「アバウト・ア・ボーイ」で注目を浴び、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」では映画ファンを熱狂させたニコラス・ホルトは、もうひとりの天才発明家ニコラ・テスラに扮する。数々の先進的かつ独創的な発明を残したテスラは、現代もなお“技術革新のカリスマ”として尊敬を集めている。
テスラは当初、エジソンの会社に加わるが、彼にコケにされたことを根に持ち離反。後にウェスティングハウスと手を組み、エジソンへの攻勢を強めていく……。
エジソン VS テスラ 名言を比較したら正反対で面白すぎる…
「天才とは99%の努力」「私ならその努力の90%を節約できる」
本作の魅力のひとつは、そのバトルの興奮である。対立構造の描写が、えてして地味になりがちな“電流戦争にまつわる物語”を、ハイテンションなエンタテインメントに昇華している。
◇エジソンとテスラ 正反対の天才は何と言ったか?
エジソンとテスラの“語録”が興味深い。エジソンは「天才とは1%のひらめきと99%の努力である」と語ったが、テスラは「天才とは99%の努力を無にする1%のひらめきである」と述べている。
またテスラは、「エジソンが干し草の山から針を見つけようとしたら、ただちに蜂の勤勉さをもって藁を一本一本調べ始め、針を見つけるまでそれを続けるだろう。私ならその努力を90%節約できるだろう」とも発言。2人の言葉を比較してみると、清々しいほど正反対だ。
映画でも、2人のヒリヒリするようなやり取りは大きな見どころだ。
◇“映画の父”エジソンは、ラストシーンに何を見るか?
世界初の動画撮影装置・キネトグラフを発明したエジソン。世界初の映画用スタジオを設立しており、いわば映画の父とも呼べる存在でもある。
本作の冒頭とラストには、水しぶきに煙るナイアガラの滝を撮影するエジソンが登場する。電流戦争の“その先”には、一体何があったのだろうか? そして彼らは何を経験し、どんな結末へと向かうのだろうか?
エジソンの瞳に宿る“その答え”を目撃した時、観客の心に煌々と光りが灯る。