「科学が未来を照らす」エジソンズ・ゲーム 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
科学が未来を照らす
直流か、交流か。一応昔、学校の授業で習ったような…? なのに、ほとんど覚えちゃいない…。が、
19世紀後半のアメリカ、電力送電法を巡って繰り広げていた、直流派の発明王エジソンと交流派の実業家ウェスティングハウスの“電流戦争(原題『THE CURRENT WAR』)”。
そう見たら、なかなか!
勿論専門的な言葉ややり取りは飛び交うものの、知的な実録科学映画ではなく、思ってた以上にエンタメ度が高かった。
テンポも有無をも言わさず進んでいき、引き込まれたり、所々ついて行けなかったり。
一番の面白味はやはり、電流の覇権を巡って争った人々。
直流一本。他は聞く耳持たず。
妻子は深く愛するが、部下や商売敵にはかなり冷たい。
が、私欲は無く、例え大金を提示されても自分の利に反するのであれば断る強い信念も。
表向きは傲慢だが、その実は孤高。
ベネディクト・カンバーバッチが演じた事でイケメンなエジソンになったのはご愛敬だが、さすがクセある天才役はハマる!
一方のウェスティングハウス。
別に彼はエジソンのように交流一本!…と頭固くなく、そこは実業家。電球の特許を持つエジソンと組もうとさえしていた。
実業家だが科学に理解を示すが、ある時失敗して大事な仲間を亡くし会社が崖っぷちに立たされるも、諦めず反撃に出、革命的な足跡を残す。
そして彼は電子産業の先駆者となった。
マイケル・シャノンがこちらもさすが巧演。
二人の間に、もう一人。
ニコラ・テスラ。
彼もまた私欲持たず、ただただ科学を信じる若き発明家だが、それ故悲運も。
才能認められ最初はエジソンの元で働くが、酷い扱われよう。
別の会社で働くも、騙され、特許も技術も設計も全て奪われ…。
そんな時出会ったのが、ウェスティングハウス。ようやく、彼の才が光る。
最も感情移入させられる人物であった。
ニコラス・ホルトの好助演。
エジソンの秘書役にトム・ホランド。
二人が並ぶとどうしてもアレを思い浮かべちゃう。
そういやシャノンも別会社でアレだし。
電流以外の発明秘話も興味深い。
有名な蓄音機。それで亡き妻の肉声を…。
我々が大好きな映画。
しかしショッキングだったのは、電気椅子。まさかそれに携わっていたとは…。おまけに電気椅子の発明をウェスティングハウスにしようと秘密裏に…。
かのエジソン。偉人や歴史の陰は分からない。
今私たちが当たり前のように使っている電力。
それを巡って当時、激しい争いが繰り広げられたのは当然だろう。それほど革新的。
ならば、それを初めて発明した時、どう思っただろう。
人によるかもしれない。が、信念を持った人ならば。
科学が未来を照らす、と。
元々は2017年の作品。
某プロデューサーのせいで長らくお蔵入りされたが、やっと光が照らされた。
正直後一歩惜しい作品であったが、知られざる歴史の逸話を知れただけでも見る価値あった。