「中身は J. ウエスチングハウス物語」エジソンズ・ゲーム DozenDollsDreamさんの映画レビュー(感想・評価)
中身は J. ウエスチングハウス物語
原題は"電流戦争" The Current War
邦題はエジソンズ・ゲーム
その内容は J. ウエスチングハウス物語
皆がいわゆる "でんき" と呼んでいる電灯線が社会的に広まり始めたころの
発電方式、送電方式をめぐる基本原理とその特許、工業規格を争う物語。
VHS vs. ベータ戦争、PlayStation vs. SEGA Saturn 戦争、BD vs. HDDVD戦争みたいな
日本人が好きなライバル企業同士の技術競争を描いた映画、、、
、、、だと思って油断して観ると、半分以上の人はおいていかれる。
教養番組の再現ドラマみたいに説明的なセリフでバカ丁寧に技術を説明してはくれず、
教養番組の再現ドラマみたいなベタな人情話で感情移入させてもくれない。
そういうセリフやシーンもあるにはあるが、尺が短く、さっさと次に進んでしまう。
たいていの人は何を争っているのか良く分からないまま映画が終わってしまう。
また、一般的な技術史において、直流vs.交流競争は
直流派:エジソン。古い世代。職人気質。頑固な上司。敗者。
交流派:テスラ。新しい世代。天才肌、学者肌。上司に理解されない部下。勝者。
という分かりやすい対立構造を使って、面白味を持たせて解説されることが多い。
ところが、本作はこれを重視しない。
テスラはほんのチョイ役に過ぎず、現代社会の礎を築いた真の立役者は
実業家 J. ウエスチングハウスであると言わんばかりに本作の物語の中心をなす。
エジソンは技術論争を仕掛けているのに、ウエスチングハウスは経済効率性を主張する。
両者の議論があまり嚙み合っていないので、両者の対立もあまり盛り上がらない。
なので、企業競争を描いた教養番組の再現ドラマみたいな熱い展開を期待していると
肩透かしを喰らってしまって、つまらないなぁという感想になってしまうのは仕方ない。
が、偉人伝、天才伝によく出てくる有名人エジソンとテスラの影に隠れがちな
ウエスチングハウスに脚光を浴びせたという点が本作の面白さと価値がある。