「天才の激突が生み出すアメリカの歴史」エジソンズ・ゲーム Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
天才の激突が生み出すアメリカの歴史
延期する前から結構楽しみにしてた作品
この作品調べるとセクハラ大王ハーベイ・ワインスタインが
横やり入れまくってメチャクチャになってったところを
監督の師匠のスコセッシの協力でどうにかなっていった
紆余曲折ある作品だったようですね
1880年代のエジソンの電球発明以後のアメリカ
電化に際し直流派のエジソンと交流派のウェスティングハウス
そして電気自動車に名を遺すテスラの奮闘を描きながら
JPモルガンやGEなどアメリカの隆盛を知る大企業の
成り立ちも知ることが出来ます
発明王トーマス・エジソンは直流配電を推進しますが
自身のアイデアを盗用されることに非常に過敏な性格で
訴訟を繰り返したり有能なエンジニア候補を冷遇するような
側面がありました
対して交流配電を推進したジョージ・ウェスティングハウスは
今でも鉄道の非常ブレーキにそのメカニズムを残す
自動エアブレーキの発案などを実現した天才です
当初はエジソンと共に電化普及を目指すような意思も
あったようですが盗用を嫌がるエジソンの工作によって
対立構図が生まれていきます
エジソンは名声を得た以後病で最愛の妻を亡くすなど
不幸も経験しますが自身の知名度を使ったメディア誘導で
ウェスティングハウスの交流が人体に危険であると喧伝し
実際に動物実験でそれを証明するまでします
対するウェスティングハウスは当初は意に介さなかった
ものの交流配電に耐えうる発電機を共同開発していた
フランクリン・ポープの研究中の事故死を経験し
一旦は開発をあきらめ会社を売却する事も考えますが
ポープの遺志を継ぐことやエジソンのやり方に
徐々に怒りを覚え真っ向勝負を決意します
そんな時交流発電をエジソンに提案し大まかな設計まで
頭にあったもののエジソンに報酬未払いなど冷遇されたり
資金不足で実現できずにいたニコラ・テスラという
青年エンジニアのうわさを聞き付けたウェスティングハウスが
テスラを引き入れ交流配電計画が具体化
ウェスティングハウスは心を鬼にし
人体への危険性を喧伝しながら電気椅子による死刑執行の
アイデアを提案していたエジソンの裏文書を見つけ出し
やり返すなどし結局エジソンは「電流戦争」に負けてしまい
自身の会社も出資者JPモルガンによって合併させられてしまい
「ゼネラル・エレクトリック(GE)」と名前も変えられてしまいます
そもそもエジソンとウェスティングハウスが共同で
アメリカ中の配電計画をしていれば最高のシステムが
生み出されたのかもしれませんがプライドが許さなかった
でもその過程で起こった周囲の動きがその後のアメリカを
支えていく大企業の誕生を後押ししたと思うと
競争の功罪とも言えるかもしれません
映画は全体的に予告編のようなエンタメ感ある
対決構図でなく史実に沿った割と淡々とした展開
エジソンの曲者っぷりをベネディクト・カンバーバッジが
絶妙に演じ1890年前後のアメリカの美術表現は
なかなか見ごたえがありました
シカゴ万博の映像化というのもなかなかないかも
また電気が都市の夜を照らす明かりとなっていくのと
絞首刑に変わる死刑執行法として電気椅子が使われる
新しい技術が人に与える影響のまさに「明暗」を
あからさまに描写するシーンは印象的でした
テーマに小難しさを感じる人もいるかもしれませんが
別に専門的な知識はいらないと思います
天才の譲れないプライドと葛藤
成功に最も必要なのは何か?情熱か?アイデアか?人材か?資本か?名声か?
色々考えながら見られる作品だと思います