劇場公開日 2017年12月16日

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「元通りに戻れてこそ完治」彼女が目覚めるその日まで ピラルクさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0元通りに戻れてこそ完治

2017年12月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 この映画には何があったか。
 まずは未知の病に侵される恐さ。あきらかに異常をきたしているのに医者は検査結果に異常はないという。過去のパターンにあてはめて飲酒やドラッグが原因で精神の疾患だろうと決めてかかられる。迷惑なほど騒ぎたてて食ってかからないと本気で病気を究明してもらえない。
 そして、ともに病と闘ってくれる家族、恋人、友人の温かさ。これは病の種類を問わない。身近な人が危急に瀕した際に悔いのない振る舞いかたとは如何にあるべきか。想いが跳ね返されるときもある。そのときどう振る舞えるか。映画をみた結果、自分が考えさせられたところである。
 映画では、実の親子、血のつながってない親子、恋人、職場の友人、いろんな距離にいる人が見守ってくれる。恋人に比重を置けばそれはそれでひとつの主題になるが、誰かひとりにクローズアップしなかったのが本作品の個性といえよう。
 では、そうしたことによって何が描かれたのか。
 病のどん底にいるときは、分かってもらえなさがかえって煩わしく、そもそも治癒にははなから無力であろう周りの人の構いが、幸にも病を克服できたときは、元通りの居場所の失われていないことを約束してくれているということ。肉体的に病を克服できても、その顛末で生活を失い、精神を病んで、元の生活に戻れなかったら、それは結果、病に負けたことにほかならない。
 そんな冷静で理性的な判断を闘病中の病人は普通下せないだろう。だから健康ないま、学んでおく意味は大きい。
 「絶対治るから」、何の根拠もなく口にされ、何も分かってくれてない証のようなこの励まし、ではあるが、同時にここには、絶対的な寄り添いと、絶えない希望が宿っているのである。

ピラルク