「東西ベルリンの終末期の設定と、タイラー・ベイツの選曲が見事にシンクロ」アトミック・ブロンド Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
東西ベルリンの終末期の設定と、タイラー・ベイツの選曲が見事にシンクロ
「アトミック・ブロンド」(原題:Atomic Blonde)。
本作の魅力の半分は、音楽にある。おそらく40代・50代のオッサン・オバハン世代なら狂喜乱舞。70~80's懐メロと効果的にシンクロしている。
選曲テーマは、英国のスパイが東西ベルリンで活躍するという設定から、80年代の懐かしい"ジャーマンポップス"と"ブリティッシュポップス(ロック)"で構成されている。
曲をよく知らないと、感じることのできない時代的シンクロ感が本作にはある。こればかりは若い映画ファンには絶対に分からないだろう。
本作はシャーリーズ・セロン主演。ベルリンの壁崩壊(1989年)の東西ドイツを舞台にした、古典的スパイアクション。あえて"古典的"というのは米ソ冷戦構造をベースにした映画の様式美のことであって、アクションやVFXが古臭いという意味ではない。映像的には、むしろ王道のカッコよさを展開している。
シャーリーズ・セロンが演じるのは、英国MI6のスパイ役で、女性版"007"的設定。セロンもさることながら、相手役がジェームズ・マカボイなので、高いレベルの演技競演が見られる。原作がグラフィックノベルということもあり、ダークな劇画調の描写によるハードコア作品になっている。
音楽を担当するのは、やっぱりタイラー・ベイツ。彼の映画音楽でいちばんイケてるのはジェームズ・ガン監督の「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズ(2014/2014)だ。ガーディアンズのサントラアルバムは、既存楽曲だけで全米チャート1位を獲得してしまうほど、その選曲センスは素晴らしく、映画のストーリーや設定、役者の動きとのシンクロが冴えまくっている。
本作ではタイラー・ベイツはオリジナル曲も書き下ろしているが、やはりジャーマンポップスでは、「ロックバルーンは99 (99 luftballons)」がひときわ輝く。ネーナのオリジナル(1983)と、英国バンドKaleidaによるカバーの2バージョンが使われている。
また予告編には、Queenの「キラー・クイーン」(1974)が挿入され、本編では、デヴィッド・ボウイの「Cat People (Putting out Fire)」や、エンドロールではQueen&ボウイの「Under Pressure」が流れる。
ほかにもデペッシュ・モードの「Behind the Wheel」や、New Orderの「Blue Monday」(1983)をHealthがカバー。ジョージ・マイケルの「Father Figure」(1987)、ザ・クラッシュの「London Calling」(1979)もある。もうたまらん。
(2017/10/20 /TOHOシネマズ日本橋/シネスコ/字幕:松浦美奈)