「I can picture it」犬ヶ島 Kjさんの映画レビュー(感想・評価)
I can picture it
何故このような映画を作ろうとするのか?思い描く世界を具現化したい以上の動機は彼の場合、やはり感じられない。いやが応なく彼の日本表現の添削を始めてしまう。途方もない想像力が込められている。かなりいびつで構図化された表現ではあるが、不快感はなく、妙に説得力があり、情熱なしには作れないディテールの多さには、もはや感謝するしかない。
排他と権力者の独善的な論理のお仕着せは現代に通じるものでもあり、戦中戦後の空気感を模して、盲目的で寡黙な日本人を描かれると、よりユニバーサルなメッセージかもしれないが、日本人への直接的な警鐘のように受け取らざるを得なかった。
しかし、そこはウェスアンダーソン、メッセージ性よりも緻密なディテールの方に目がとられる。少数意見に形式的なリスペクトを示し、後で蹂躙する気がありありな権力者。チーフとナツメグの大人のお洒落な会話。腎臓移植の長回しシーンは常人の理解の及ぶ所にはない。
ストーリー的には、悪役側の描写、特に小林市長にはもう少し背景説明が欲しかったところ。
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