「何を見せたいのかわからず」ビブリア古書堂の事件手帖 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
何を見せたいのかわからず
『しあわせのパン』『ぶどうのなみだ』の三島 有紀子監督らしい、ほんわかした世界で役者が見せる「間」の演技を生かす演出でしたが、本作ではそれが逆に悪手に。
犯人が出てきた瞬間にわかる。
実に浅い、犯人の動機。
なぜ執着し、殺意を抱くまでに心が歪んだのかの説明不足。
CMや予告編でさんざん露出していた「祖母の恋愛」に重きが置かれていたために、 現代の主人公たち(大輔と栞子)の心の動きに割かれる時間が少なく、まったく感情移入するとっかかりがないのもマイナス。
おまけにクライマックスでは、主人公たちと犯人の3人とも頭が悪すぎ。
カーチェイスなんかも意味不明。
あんな行為で解決しないでしょ?みたいな落ちだったし。
ミステリーでもなく、サスペンスでもなく、恋愛ものでもなく、キャラ萌えでもなく。
すべてにおいて、何をしたい作品だったのか、よくわからないまま終わりました。
そして本作の展開では、栞子が「古本から持ち主の秘密をすべて見抜く」という設定が、生きていなかったと思います。
「本から犯人の動機やその動機に至る因果関係を見抜いて、『あなたの執着は間違ってるんですよ』と指摘して、犯人の自我を崩壊させて(または反省させて)解決する」くらいの展開じゃないと、この設定自体が存在するのがおかしくないか?と首をひねる結果になりました。
ただ、あくまでも推測ですけれど、監督なりの自分が得意な方向性にもっていこうとしたのと、プロデューサー側のジャッジが拮抗して、どうにもならなかったところに着地したような印象のフィルムで…
盛り上がらず、楽しめず。
残念でした。