「ドラマ部分の荒っぽい演出がマイナス」世界にひとつの金メダル りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
ドラマ部分の荒っぽい演出がマイナス
1970年代後半から80年代にかけての物語。
元はワイン生産者だったセルジュ・デュラン(ダニエル・オートゥイユ)、馬好きが高じていまは乗馬クラブの経営者。
ひとり息子のピエール(ギヨーム・カネ)の才能を信じて、息子を応援してきた。
少年時代は乗馬の才能と情熱をみせていたピエールだったが、大学を卒業すると弁護士の道を歩むことにした。
しかし、乗り手としての未練が捨てきれず、復帰。
そのとき出逢ったのが、小柄な若駒ジャップルー。
非凡な跳躍力をみせるジャップルーであったが、御しがたい馬でもあった・・・
というところから始まる物語で、日本タイトルに示すとおり、最終的にはピエールはオリンピックに2度出場し、2度目の大会で金メダルを獲得するまでを描いていく。
物語としてはオーソドックスなつくりの成功譚。
なのだが、主役のピエールが未熟で、なかなか感情移入しがたい。
自身の未練から復帰したにもかかわらず、その未練の感情を認めず、競技で失敗しても自身を振り返らない。
乗り手としての技量はあるにはあるが、狭量な心を馬に見透かされている。
そこんところに気づいていかない。
しかし、父親の死とジャップルーの売買話が出たことで、自身の未熟さに気づいて、ジャップルーとの心の距離を縮めていく・・・
映画はここいらあたりから俄然面白くなるのだが、いかんせん、それまでの撮り方がかなり荒っぽく、面白さが半減している感じ。
特に前半は、もやたらとカメラを動かし、無意味にアップで撮っていて、落ち着かない。
監督のクリスチャン・デュゲイは、『スキャナーズ2』及び『3』や『アート・オブ・ウォー』などのアクション映画出身なので、ドラマ部分に悪い癖が出たのではありますまいか。
ただし、馬術競技のシーンは躍動感があり、昂奮させられる。
監督のクリスチャン・デュゲイも主役のギヨーム・カネも馬術競技の経験者ということで、ここは面目躍如といったところ。
なお、原題は「JAPPELOUP」で、馬の名前。
なので、本当の主役は馬なんだけどね。