「日本映画界の小百合守」北の桜守 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
日本映画界の小百合守
吉永小百合120本目の映画出演作。
戦中戦後、北の大地を生き抜いた母と息子の物語。
監督は『おくりびと』の滝田洋二郎。
堺雅人、篠原涼子、阿部寛、佐藤浩市ら日本映画界を代表する主役級がズラリ。
『北の零年』『北のカナリアたち』に続く“北の三部作”と位置付けられる、その最終章。
…と、本作、話題性のある側面だけは幾らでも持ち上げる事が出来る。
が、作品そのものは…。
『北の零年』は壮大な開拓物語としてそれなりに見応えあった。
『北のカナリアたち』は若い役者たちとのアンサンブルとミステリー要素でこちらもそれなりに見応えあった。
それだけに本作は、その話題性以外取り柄の無い、凡作としか言い様がない。
毎度の事ながらの、吉永小百合の吉永小百合による吉永小百合の為のTHE吉永小百合映画。
冒頭、無理のある若作りメイクで、阿部寛が夫で、中学生くらいの子供。
もうここだけで、吉永小百合の為に企画され、吉永小百合をまたもやちやほやする為に作られたようなもの。
一応今回、ボケという老いの役柄設定もあるにはある。
しかしそれによって尚更明るみに出てしまった、演技力の無さ!
『わが母の記』の故・樹木希林と比べてみよ! いや、そもそも肩を並べようとするのが失礼なくらい足下にも及ばない。
それにしても今作は、いつも以上に吉永小百合の演技の不味さが気になった。
悲しみのウルウル表情なんて見てるこっちが痛ましくなる。ボケが進み、鏡の自分と話したり、桜の木を愛でながら語り掛けるシーンは、別の意味で怪演!
吉永小百合は紛れもなく日本映画界の大女優にして名女優だ。
でも、いつまで自分を寵愛してくれる作品だけに出演し続けるつもりなのか。
贔屓も時代錯誤も甚だしい。
中盤、息子がさすがに母の扱いに困り態度に出してしまうシーンがあるが、何だかそれが、吉永小百合という大女優を重宝しながらも扱いに困る日本映画界そのもののような気がしてならなかった。
別に吉永小百合だけに否がある訳ではない。
本作は他にも、難点・不満点・微妙な点が挙げたらキリがない。
幾つか挙げていくと…
超豪華キャスト共演だが、皆、本来の実力を発揮してるとは言い難い。
堺雅人も何だか演技も台詞回しもあの役みたい。母の元を離れ渡米してホットドッグ日本店第一号の社長として成功した彼の元に昔のいじめっこが金を借りに現れて“やられたらやり返す”シーンなんてまさにそう。また『その夜の侍』のような凄みのある濃密な名演を見たい。
今年3本の映画に出演の篠原涼子だが、その実力を拝めるのは、やはり期待の『人魚の眠る家』でだろう。
阿部寛は最初と最後だけ。佐藤浩市や岸部一徳らも引き立て役にしか過ぎない。
話は過去と現在が交錯して展開。
過去シーンは、北の大地で寒さと飢えに苦しみ、時に闇商売を手伝い、乗っていた船が魚雷で沈没し長男を亡くす…という壮絶なもの。
しかし何故だろう、あまり辛さが伝わって来ないんだな。悲劇と感動を盛り上げる為の材料。
現在シーンは、ビジネスマンとして成功した息子が母と再会し、また一緒に暮らし始めるが…。
離れていた15年の歳月が母と息子の間に溝を作ってしまったが、再び一緒に過ごす内に、共に歩んできた苦楽を思い出す。思い出の地を巡る旅に出る…。
母と息子の絆物語としては感動的なのかもしれないが、途中から仕事を放り出し。
ただのマザコン男の話…?
仕事の方も売り上げ伸びず。母ばかり気に掛けて、妻との関係もぎくしゃく。
だけど最後は、親子愛も夫婦愛も仕事も全ていい方向に。
この手の邦画あるあるの、安直な感動締め括り。
そして色々言われている、時折挿入される、謎の舞台演出。
登場人物の心情や物語の展開を斬新に表した演出なのだろうが…、一体何なの、アレ。
しかもその舞台演出、結局最初と最後の方だけ。なら、ずっと劇中劇のままでいいじゃん。何の為の舞台演出…? エンディングは舞台演出で桜吹雪の中、合唱。
まあ、劇中劇も決して面白味があるとは言えず。
とにかく、平凡退屈。
大女優を配し、古き良きいい日本映画を作ろうとしたが、それが全て残念な結果になってしまった典型例。
それでも本作は、大手映画会社の、名監督&豪華キャスト、これぞ感動的な邦画とでも言うべき、吉永小百合映画。
今回も日本アカデミー賞ノミネートは100%間違いない。おそらく、全部門でノミネートされるだろう。
こんなのが、『カメラを止めるな!』『孤狼の血』『万引き家族』ら意欲作と並ぶかと思うと…。
日本映画界と日本アカデミーの小百合守。
こんばんは(*^^*)
近大さんのレビュー見て気付きました!
私、吉永さんの事一言も触れてない💦
本当に倍返しされてましたね(笑)
時期的に半沢さんでしたね💧
いつも共感ありがとうございます(^_^ゞ