「男にしか分からない、「もがき」って羨ましい。」火花 ガーコさんの映画レビュー(感想・評価)
男にしか分からない、「もがき」って羨ましい。
菅田将暉さんの神がかった演技力に、今回も見事に心臓を鷲掴みにされました。
今回演じたのは、売れない芸人「徳永」。
カメレオン俳優という名に相応しく、ダメ芸人の姿を見事に演じています。
先輩芸人の「神谷さん」に憧れと嫉妬を抱きながら、自分なりの芸で粛々と勝負する姿は本当の芸人のようです。
タバコをプカプカ吸いながらネタ帳の前で思案する姿、相方のダメ出しをする姿、売れなくて途方にくれる姿、全てが売れない芸人「徳永」そのものでした。
やってもやっても上手くいかず、笑いながら苦しみながら、もがき続けた10年間。
続けるか、辞めるか、その葛藤の中でお笑いそのものと真剣に向き合い続ける苦しさがドーンと胸に突き刺さりました。
菅田将暉さん=徳永でなければならないと感じた2時間でした。
途中、涙を流さずにはいられなくなるような、素敵なシーンもありました。
涙をだらだら流しながら、必死に舞台に立ってコントを続けるシーンは圧巻の一言。
徳永の芸人最後の人生に、拍手を送りたるなる、魂の叫びを感じた演技でした。
もちろん、桐谷健太さんの演技も素敵です!
先輩と慕われ、常に面白い自分を見出してきた「神谷」の姿。
始めは純粋に笑わせることそのものを楽しんでいたはずが、徐々に「笑わせなければならない」という気持ちが自分を襲い始めます。
どんどんおかしな方向へ彼が狂ってしまう姿は、観ていてとても痛く感じました。
そして、同時に切なくなりました…。
それでも、お笑いを止めることはしない、「神谷」という人物のアホさ…!
そこに、笑いに対する強い愛を感じずにはいられませんでした。
才能がある無し関係なく、「お笑い」が好きという気持ちがある限り、芸人は芸人であり続けるのでしょう…。
人を笑わせるって楽しい、面白いと思えれば、何年だって夢に向かって全力で生きられるのだと思います。
お笑い漬けの「徳永」と「神谷」は、そういった意味では、とても充実した10年だったなと思います。
これから先も、人を笑わせたいと思う気持ちだけは失わないでほしいです!