劇場公開日 2017年12月8日

  • 予告編を見る

「難物だけど本物」否定と肯定 ピラルクさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0難物だけど本物

2017年12月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

難しい

 難しすぎて面白さが分からなかった、というのが第一の感想。なにが私には難しかったか、というと、字幕読み取り力と内容の理解力が足りなかったゆえ。セリフの字面を追うだけではなく『この人がここでこう言うとは、つまり……』と場面・展開を踏まえたうえで、そのセリフの意味するとことを逐一抑えていかないと面白さは分からない。当然のことだが、とりわけこういう法廷モノはそこが全て。
 そして法廷モノの面白さには、その判決がどうなるかのドラマ性に加えて、自分が展開についていけて、かつ判決を左右させる絶妙な言いくるめの応酬を裁判官にも勝る判断力でもって味わい、神の視点をもった傍観者になれる、という優越感も含まれよう。
 つまり単純に作品が面白いかのみならず、法廷モノという難物を面白く見れる能力を自分が備えていることを確認できて愉快だ、という面白さも作用反作用のごとく同量伴っていると言える。
 被告側の弁護陣営はプロフェッショナルで頼もしかった。理解力不足の自分には本作品の面白さは厳密には未知数なわけだが、作品自体は悪くはないと思う。
 ひとつ言うと、字幕は素直な英訳と違い、表示する字数や時間において制約をうける。制約による難しさをも乗り越えてついていくには慣れも必要。なのに私は、劇場で字幕映画をみるブランクが半年ほどあった。この作品をみる前に、セリフ多めの字幕映画を2、3本みていれば、理解力もウォームアップされてまた違ったかもしれない。吹き替えがあればそちらがよかったかも。
 一番印象に残ったのはアウシュビッツの映像。それも爆破されて埋もれたガス室の地面。ただの瓦礫の地面なのに戦慄を覚えました。かの『シンドラーのリスト』で、機関車がアウシュビッツの門に入っていくシーン、あのおぞましさ、あの戦慄、あの迫力。あれと同じ感覚を、なんでもない地面を映すだけで呼びさましてくれた本作は、本物だと納得できた。

ピラルク