否定と肯定 : 映画評論・批評

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否定と肯定

劇場公開日 2017年12月8日
2017年11月28日更新 2017年12月8日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー

“事実”を巡る法廷闘争の中で浮かび上がる、人を信じることの難しさと素晴らしさ

フェイク・ニュースやオルタナティブ・ファクトが流行語になった今年は、「報じられた出来事が事実なのか虚偽なのか」という問題をしばしば考えさせられた。その意味で「否定と肯定」は旬の映画だ。主人公は、アメリカの大学教授デボラ・E・リップシュタット(レイチェル・ワイズ)。著述をめぐり、イギリス人の歴史学者デビッド・アービング(ティモシー・スポール)から名誉棄損で訴えらえた彼女は、ナチスによるユダヤ人虐殺(ホロコースト)は無かったというアービングの主張がフェイクであることをイギリスの法廷で証明する必要に迫られる。

この裁判の争点は、ホロコーストの歴史認識。原告はアービング、被告はデボラという対決の構図だ。が、ドラマは必ずしもこの図式に当てはまらない。柱に据えられたのは、完全アウェーのイギリスで孤立するデボラの葛藤。そして、裁判に挑むデボラが対決するのは、アービングではなく、リチャード・ランプトン(トム・ウィルキンソン、名演!)をはじめとする自分の弁護団なのだ。裁判とドラマの意図的な食い違い――そこに、この映画の妙味がある。

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実際、裁判の戦術について、デボラと弁護団はぶつかりあう。アメリカ人らしく直球で三振を取りたいデボラは、自分で証言台に立ち、アービングをやりこめたいと考える。かたやイギリス人的にコツコツとアウトを取りに行きたい弁護団は、アービングの主張のでたらめぶりを客観的な証拠の積み重ねで証明する戦法を取ろうとする。そんな彼らと、デボラはどうやって折り合いをつけるのか。彼女がこの裁判で何を学び、直情的な自分をどう変えていくのかを、デビッド・ヘアの脚本は緻密に描き出す。その果てに、人を信じることの難しさと素晴らしさが浮かび上がってくるところが、ヒューマンドラマとしてのこの映画の魅力だ。

裁判劇としても見ごたえがある。とくに、「虚偽を心から信じている者を嘘つきと呼べるのか?」という裁判内の問題提起は、タイムリーであると同時にタイムレスだと感じた。

矢崎由紀子

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3.5 3.5 (全78件)
  • 主人公が情熱的 情熱的なのは良いのですが、少し冷静さを失いがちなところが欠点です。 映画自体は結構普通でした。 しかし直接的でなく、間接的にアウシュビッツを描くことで、より醜さや、愚かさといったものか浮き上が... ...続きを読む

    Rewind That Rewind Thatさん  2018年3月29日 22:30  評価:4.0
    このレビューに共感した/0人
  • 最終日に鑑賞 シネマヴィレッジ・イオン柏で鑑賞 重々しい法廷シーンでは役者陣の迫真の演技に魅せられ、最後まで飽きることなく鑑賞できました。 歴史を勝手に都合よく変えるのは言語道断なのですが、善悪ですべてを... ...続きを読む

    ケー ケーさん  2018年3月9日 21:42  評価:4.0
    このレビューに共感した/0人
  • 英国の制度。 鑑賞前も後も地味な印象は拭えない実話ものだったが 英国の裁判制度を学べたのは面白かった。米国と違い、 被告側に立証責任があるのだ。弁護チームを結成して まさかの異論に立ち向かう彼らの戦術は面... ...続きを読む

    ハチコ ハチコさん  2018年3月9日 16:29  評価:4.0
    このレビューに共感した/0人
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