「青春時代の儚さは現在も変わらないかしらん」きみの鳥はうたえる りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
青春時代の儚さは現在も変わらないかしらん
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以前のバイト先で知り合った静雄(染谷将太)と同居生活をしている僕(柄本佑)。
いまは大型書店でバイトをしているが、無断でサボったりもしている。
同じ職場で働く佐知子(石橋静河)から誘われ、以降、静雄も含めて、三人で毎日毎夜、遊んでいる・・・
というところから始まる物語は、まぁ、話としてはそれだけ。
ふたりの男性のあいだで揺れる佐知子の心情や、男性ふたりの微妙な友情が、ダラダラとした生活のなかで描かれていますが、それはユルイといえばユルく、相手の奥深いところまで突っ込んでい行かないあたりの微妙な距離感があって、そこいらあたりがこの映画の魅力・・・
なのだけれど、この若者の生き方って現代のそれなのかしらん、と脳裏をかすめていきました。
気になったので調べてみたところ、原作小説は1980年代はじめに書かれたものなので(原作者・佐藤泰志は1990年に命を絶っている)、モラトリアム世代の青春時代に重なる。
バブルがはじける前の、社会に出る前の浮草生活が許容された時代ならば、こういう生き方も可能だったろうし、また、可能だった。
遅れてきたモラトリアム世代としては、かなり、これに近いような生活だった・・・と思う。
でも、現代でこんな生活可能のかしら。
社会に出るに出られない閉塞感からくる浮草生活ではないだろう・・・と。
現代を舞台にしたならば、退職後のアラ還世代の男女三人で描けば、納得もできたかもしれない・・・なんてことも思ったりして。
とはいえ、他者との深い関係を拒否・忌避しながらも、最後の最後に自分の中にある熱い気持ちを肯定する・・・という僕の変化が、青春時代特有の儚さでもって描かれた佳作です。
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