劇場公開日 2017年10月28日

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「陣治」彼女がその名を知らない鳥たち まつこさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0陣治

2017年12月10日
iPhoneアプリから投稿

最高だった、めっちゃくちゃ面白い。
不運にも予告編があまり面白く無さそうだと思ったけど、白石和彌監督だし蒼井優だから観なきゃなと思い、遅れながらも観に行ったけど、まじで良かった。
白石監督〜…!!「凶悪」で初めて存在を知って、面白いけど、これがMAXの作品なんじゃないか?と思ってたけど、からの「日本で一番悪い奴ら」「牝猫たち」、で今回の作品。確実に、如実にスキルアップ・レベルアップしとるやないかい、作品追うごとに毎回名作生み出してる!本っ当好きだわ。
ストーリーは愛と昔の恋とミステリーと人間の汚いところが入り混じってる話で、そういう作品よくあるし、不倫ものもよくあるし、在り来たりな展開を予想していたけど、開始5分で「あー絶対予想と違う面白いやつや」とわかる。展開とか、次に起こるエピソードへの流れとかどんどん惹き込まれていってもう元に戻れない感じが心地良かった。
宣伝では登場人物全員人間として汚い感じをガン押ししていて、実際蓋を開けてみればそれはまぁその通りではあるのだけど、ひとりひとり、何故か憎めない。かわいいところ、やさしいところ、アホなところとかが垣間見え、みていて飽きない。たまに愛おしくも見えてしまう。また時折出て来る馬鹿過ぎる発言やアホな行動に今迄少しひいてたのにいきなり笑ってしまう観客の反応もなんだか新鮮だった、観ている人達が徐々にこの作品にハマり、ファンになっていく空気が館内に充満していくのが分かった。
この作品でやたら評価されている蒼井優。
私にとっては蒼井優はどんな作品に出ていてもどんなちょい役でも、常に蒼井優が出てる時点で最優秀主演女優だと思ってるから、蒼井優が出てる作品が公開された年は、日本アカデミー賞をみて「今年はなんで最優秀を受賞出来なかったのか?」といつも疑問に思っているけど、これはいけるんじゃないかな?去年のオーバーフェンスでも魅力爆発してたけど、今回のも相当だ。「相当だぞ!」と思いながら終始興奮していた私がいた。蒼井優って何であんなに凄いの、何で何やらせてもズバ抜けてるんだろ。優等生。可愛くて、人間らしさが出てて、唯一無二で、人柄も色濃く出てる。代わりはいないね。そりゃあ皆彼女を好きになるよ。最初は「蒼井優なんて別に可愛くないし、ぶすじゃん」と言っていた男子もいつの間にか気になってて好きになってるんだよ。わかんないけど私の予想だけど、きっと蒼井優を取り巻く人達の中にはそういう人がごまんといるんだよ。私も最初「高校教師」で見た時は、ライバルの役だったし大嫌い!と思ってたけど岩井俊二作品とか「亀は意外と速く泳ぐ」くらいから、なんか…好きかも…と思い始めたんだ。留まるところを知らず成長しているね。好きが止まらん。今回の十和子の役も目が離せなかったー。
阿部サダヲに関しても何かの賞とるだろなー。阿部サダヲって実は好きでも嫌いでも、面白いともつまんないとも思っていない存在なんだけど、「夢売るふたり」「謝罪の王様」とか意外と私が観ている阿部サダヲ出てる映画は面白いの多いね…しかし今回の阿部サダヲは本当良かった。阿部サダヲ演じる陣治という男、良かった。私が5万回位口酸っぱく言ってる、恋愛映画や純愛映画の重要なポイント「相手の事を本当に”好き”と思っているように見えるか」。クリアしてる…というか愛が物凄く伝わってきてたね。ウザくも見えるけど、見た目は本当に汚い汚物みたいな男でこの映画が4DMXだとしたら彼が出てきただけで室内が常にくっさい臭いでいっぱいになるような男なんだけど、中身と行動は純粋無垢の極みだった。他の男たちはイケメン×ゲスなんだけど、陣治が、こんな陣治だけが最後の砦だった。最初はこんな不潔な男…と見ていたのに、朝目覚ましできちんと起き、真面目に働き、十和子の生活の面倒を精一杯見てあげて、ピンチは感じ取り、想像よりも職場や社会ときちんとコミュニケーションがとれて生活力もある。意外と真面目な男。それに甘んじて不倫する十和子は十和子だけど、不倫に堕ちるひょんな出会いやきっかけとか、不快というより面白さが先行した。そして、十和子の酷い行いとゲスイケメン達がより陣治の良さを際立ててるんだよね。ラストシーンは涙が止まらなかった。
全編通して、十和子の「陣治」と呼ぶ声がすごく好きだったな。何か知らないけどかわいくて愛おしいんだこれが。かわいいシーンなんてほぼ皆無なのに。んで陣治に対して常に誹謗中傷の嵐なのに、食欲は旺盛なのか陣治の用意するご飯はどんな状況でも黙々食べる十和子も可愛かった。
全てが見所の映画だった。

映画公開終わる前に映画館で観ることが出来て良かったー。これを映画館で観てなかったら白石作品ファンとしても映画ファンとしても私は本当にどうしようもない奴になるところだった。観に行けて良かった。白石監督作品は、凄い俳優陣たちが出るけど、更に凄いことになって俳優陣たちの結果も残していくから、白石監督は映画人にとっても偉大な存在だろうな。日悪の時も思ったけど、映画を作る為に生まれてきた人だね。

まつこ