「.」ザ・マミー 呪われた砂漠の王女 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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自宅にて鑑賞。前半~中盤辺り迄はテンポも良く大作の貫禄は充分だったが、徐々にグダグダになり、陳腐なヒューマニズムに逃げる落とし所もキレが悪い。唐突に登場するキャラクター達は造形が薄っぺらく違和感満載の取って附けた感があり、展開が進むにつれ混乱を来すストーリーもチンケでチグハグな印象。結局何がしたかったのか判らない男勝りなヒロインA.ウォーリスの“ジェニー・ハルジー”が終始映えず、相対的に“アマネット”のS.ブテラの魅力が際立った──本作は彼女の映画だ。潤沢な製作費を思わせる画面に大甘の採点。50/100点。
・ホラーとコメディの相性が佳いのは、過去作を引用する迄もなく周知の事実で、極限の緊張の中でのユーモアと云う緩和は相互的に作用し合い、抜群の効果を産む。本作ではこのコメディ要素が笑うに笑えず、ホラーと足を引っ張り合った結果、相殺し合い、どっち附かずで中途半端な出来になってしまった感がある。T.クルーズ演じる“ニック・モートン”は頼り甲斐がある二枚目なのか、少し間が抜けてる狡猾な二枚目半なのか判り辛く、その場凌ぎ的な魅力に乏しいキャラクターにしか見えなかった。
・随分恰幅が良い“ヘンリー・ジキル”博士のR.クロウだが、“ニック・モートン”のT.クルーズが'62年生まれなのに対し、R.クロウは'64年生まれと、現実は作中での印象と逆転する。尚、クライマックスでこの二人が格闘する中、R.クロウの“ヘンリー・ジキル”博士が何度か口にする科白"This is the Moment"は、ブロードウェイでも上演されたミュージカル『ジキル&ハイド』の第1幕で“ハイド”が唄う曲名からの引用である。
・共演陣の中では、“アマネット”のS.ブテラ以外にユーモア溢れる水先案内人的なキャラクター“クリス・ヴェイル”のJ.ジョンソンの好演が印象深かった。
・開始早々いつもの「UNIVERSAL」のロゴの後、「DARK UNIVERSE」とロゴ表記が続く。この“ダーク・ユニバース”とは往年('20~'50年代)の主に“ユニバーサル・モンスターズ”で製作されたホラー作を現代版へとリブートするのを目的とした新レーベルで、本作が記念すべきその第一作となる。ちなみに『フランケンシュタインの花嫁('35)』が第二作として準備中であるとリリースされている。
・本作のオリジナルは『ミイラ再生('32)』であり、『ハムナプトラ/失われた砂漠の都('99)』に次ぐ二度目のリブート作となる。
・序盤、輸送中の墜落シーンでは、二日間に亘り64回撮り直され、この撮影で多くのスタッフとキャストが嘔吐や眩暈に苦しめられたと云う。
・鑑賞日:2017年8月25日(金)