「能天気なアクションヒーロー」ザ・マミー 呪われた砂漠の王女 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
能天気なアクションヒーロー
予告編にあった通り、古代の墓を暴いたらそこに閉じ込められていた王女が暴れだしたという話である。何度か予告編を見るうちに次第に想像力が膨らんで、作品に対する期待値が高くなってしまった。つまり、古代の墓に対して考古学的なアプローチを試みる側の人間ドラマがあり、一方で不用意に暴いてしまって王女が暴れだしたアクション劇があり、圧倒的な力を発揮する王女を止めるには古代の出来事の真実に到達しなければならないというデッドラインのドラマだ。数千年前に何が起きたのか、王女はなぜ閉じ込められたのか。トム・クルーズが学究の徒を演じるとすれば非常に興味深い。そんな風に想像が膨らんでいた。もはや妄想である。
ところが実際の作品は私の妄想とは全く違っていて、結局予告編の映像が一番面白かったという羽目になってしまった。トム・クルーズはいつもの能天気なアクションヒーローで、感情移入は不可能である。ヒロインは強気で行動的な美人というトム・クルーズ映画では定番のタイプ。設定は違っても、ミッションインポッシブルのシリーズを見せられているようだった。なんの新しさも感動もない。
ストーリーは一本調子で厚みがない。それは登場人物の性格が薄っぺらで単純であることに由来する。単純な人間しか出てこなければ複雑な話になりようがないのは当然だ。
唯一見どころと呼べるのがアクションかもしれないが、この種のヒーロー物は決して主人公が死なないという予定調和があるから、見ていてもドキドキ感がない。最後はトム・クルーズがキムタクに見えてきた。やれやれ。