「知的な興奮に満ちた傑作(パンフ購入推奨)」ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ uttiee56さんの映画レビュー(感想・評価)
知的な興奮に満ちた傑作(パンフ購入推奨)
四半世紀ほど前にマクドナルドで働いていたことがあるので興味津々で見に行ったが、上映終了後に劇場のスタッフに思わず「すっげぇ面白かったです」と話したほど、知的な興奮に満ちた傑作であった。
レイ・クロックの自伝と、マクドナルド兄弟の子孫への取材をもとに作られたという、この映画の描き方は極めてフラットなものだ。大方の視聴者や映画評論家は、事業を乗っ取った悪者としてレイを見ているようだが、自分にはそうは思えなかった。レイのハンバーガー事業に対する情熱はマクドナルド兄弟と何ら変わらないかそれ以上のものに見えた。だからこそ、レイの目にはマクドナルド兄弟が自分の大発明の価値を理解せぬ愚か者に映ったのである。シェイクの品質を落としたのも、マクドナルド兄弟がロイヤリティで妥協してくれないためにやむを得ず行った苦渋の決断であった。事実、事業のキャッシュが回るようになってからは早々にアイスクリームに戻したというのは、映画の最後に説明があった通りである。
もちろんマクドナルド兄弟の言い分も正しいと思うが、彼らのやり方ではマクドナルドはカリフォルニアの小さなハンバーガーショップで終わっていたことだろう。レイから受け取った小切手以上の収益を彼らが生み出すことができたかどうか、甚だ疑わしい。
マクドナルドの収益源はハンバーガーではなく不動産である、ということも聞いていたが、具体的な内容は知らなかったので、その内容が明かされた瞬間には驚愕を禁じ得なかった。これを「加盟店から搾取している」などと言う者は、資本主義を理解せぬ者であろう。本部は新たなキャッシュポイントを得る。加盟店は自分でローンを組むリスクと高金利を負わずに済む。誰も損をしていないのである。
とはいえ、乗っ取りは乗っ取りである。客商売であるマクドナルドにとっては探られたくない暗部であることには違いないであろう。映画の最後に、レイがマクドナルド兄弟のノウハウを真似して独自の事業を立ち上げるのではなく、マクドナルド兄弟の事業を乗っ取る道を選んだ理由が明かされるが、これはアメリカ社会の事情に根ざしたものであり、日本人が解説なしで理解することは難しい。是非ともパンフレットを購入して読んでみて頂きたい。
1950年代のアメリカの空気感を忠実に再現しているように見えた映像、素早いカット割りと展開で見る者を飽きさせない演出も素晴らしかった。字幕以上の情報を汲み取ろうと乏しい英語力をフル稼働させたのでとても疲れた(笑)
マクドナルドに遠慮してのことなのかは知らないが上映館がとても少なく、映画館でもう一度見たいと思っても恐らく難しいだろうというのが残念な点である。
同感です
マクドナルド兄弟が「古き良きアメリカ」でレイが「非情な利益至上至上主義者」と見るレビューが多くて、ちょっと違うんじゃないの?と思います。家族で楽しめるハンバーガーショップを目指す点においてはレイも兄弟と一緒なんですよね。そもそも兄弟が採用したセルフサービス方式・効率的な調理システム開発も「コスト削減・利益重視」が目的なので彼らもレイと五十歩百歩。レイを悪と決めつけるのは短絡的ですよね。あくまで個人的見解ですが「トム・ハンクス主演」だったら更に面白かったような気がします
全く同感です♪
「レイはサイコ」だとか、マイケルキートンの役づくりのせいか、人間性の好き嫌いだけに目を向けているレビューも多いですが本質は全く別のところにありますよね。
兄弟だって店を増やしたかったのは冒頭で語られていたし、失敗したのは熱意とビジョンがかけていたのだと思います。
最後にレイは白紙の小切手を渡したり、結局誰も損していない。マクドナルドがあるから色んなフランチャイズが花開いたのです。レイがいなければまた違った世界になっていたかもと思うと感慨があります。
良いレビューでした♪ありがとうございます。