「「投影」の要素弱ない?」トゥルー・ストーリー erimakiさんの映画レビュー(感想・評価)
「投影」の要素弱ない?
実話元サスペンスとしては「ゾディアック」や「モンスター」を連想させるような、ダークで不穏で深淵な空気とそれに見事に順応するキャスティング陣の演技はとても良いと思ったが、ストーリーの肝心な部分で釈然としない部分が多く、トータルでは残念な印象だった。
・ロンゴが供述を二転三転させた動機について
ジルがロンゴとの面会で言っていたように注目を浴びたいから?マイケルを弄びたかった?しかし決定的な描写はなかったように思う。
更にロンゴが家族を殺害した動機も結局わからず仕舞。
・ロンゴの未完成なキャラ
主役の一人であるロンゴのキャラクターとその目的など、重要な設定が明確でないのが原因となって未完成な創作物というイメージを多分に受けた。
事実を元にしているわけだからそこは如何しようも無いと言われればそれまでだが、それならそれでストーリーの組み立て方やテーマをどこに絞るかなど見せ方の工夫である程度変えられる部分もあったのではないか。その一つが以下の「投影」に関してだ。
・「投影」に関して
マイケルとロンゴが互いに意識を投影していく…この「投影」が一つのテーマらしいというのは言われれば成る程そうかもしれないと思い当たる部分はある。しかしもっと強調しても良かったんじゃないだろうか?もっとマイケルが己にロンゴを見だして苦悩葛藤するような描写を十分に入れて心の深淵に迫って欲しかった。
実際の事件のことは知らずに初見でこの映画を見た時、果たしてこのマイケルの内面に「投影」があるということに意識がいくだろうか?
ただ己の名誉回復の為にこのチャンスを逃すまいとロンゴを追っかけて奮闘していたようにしか見えないんじゃないだろうか?
・ピースは揃っていた
ジョナ・ヒルの、ロンゴに翻弄される際の揺れ動く感情を決して大げさにならずごく自然に表現する演技力。
ジェームズ・フランコは微笑むと優しいが時々眉を潜めた時の目つきの凶悪さがロンゴという得体の知れない人物にハマっている。
名作になり得る素材が揃っていただけに惜しい。