「笑いと涙で父娘の距離を縮めるエルドマンという精霊」ありがとう、トニ・エルドマン ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
笑いと涙で父娘の距離を縮めるエルドマンという精霊
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160分のヒューマンドラマと聞くと多少面食らってしまうところもあるが、本作を観ると、なるほど、あの父と娘が距離を縮めてじっくりと関係性を醸成していくにはそれだけの時間が必要だったのだと思い知らされる。とはいえ、これらのテーマや目的を熟させるのに、本作はなんと奇妙なアプローチを試みたことか。父が扮装するエルドマンは、見た目も言動も変だが、どこか人を惹きつけ、納得させるところがある。しかし、父親は決して聖人君主であるわけでなく、エルドマンに扮しなければ娘に直接本音をぶつけることができない小心者とも言えるのかも。そのいじらしさが何とも言えない共感を呼ぶ。やがてエルドマンというサナギは毛むくじゃらのオバケへと変貌。と同時に、娘の中にも、エルドマンの破壊力、いや人と人との触れ合いを尊ぶ心が受け継がれているのが見て取れる。この父があってこそ、この娘あり。そのささやかだが心に沁みるラストが素晴らしい。
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