「自覚はあるみたい」グレイテスト・ショーマン 財団DXさんの映画レビュー(感想・評価)
自覚はあるみたい
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キャストの熱演や歌とダンスは一見の価値あり。ただ諸々の描写があまりにも薄味で淡々としているので、作品の長所を邪魔してしまっているのかも…。
主人公のバーナムは元々は“持たざる者”だった。そこから成り上がる場面が大幅に端折られたのは残念。彼はさらなる承認欲求を暴走させ「社会が定めた栄光」というものを追い求める。誰かに認めてもらいたい気持ちはわかるがそれに固執すると破滅を招いてしまう。
劇場の焼失や家庭の崩壊から、「自分にとっての本当の幸せ」に気づく…のだが、ではそれを取り戻すために何か努力したかというとそうではない。結局は周りに甘やかされ、なんやかんやで家庭を取り戻す。
本作に登場する歌はどれも素晴らしいが、物語を推し進めるファクターとまでは成り得ていない。中盤で歌われる『This is me』も肝心のバーナムには届いていなかった。また、恋愛描写もフリークの描きこみも浅いのは欠点と言わざるを得ない。
ここまで色々と酷評してきたが、本作を捨てきれない理由は劇中に評論家が登場し、観客との評価の乖離を描いたからだ。形や経緯が歪でも心に響くものがあれば観客は喝采を送る。厳しさを捨てれば映画文化の退廃につながるが、理屈抜きで映画を楽しめなくなってしまうのは寂しいものだ。公開当時のアメリカとリンクしたのは作り手があらかじめそういったことを見抜いていたのだろう。
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