「物足りなさを感じるテンポの良さ」グレイテスト・ショーマン ひかりさんの映画レビュー(感想・評価)
物足りなさを感じるテンポの良さ
遅ればせながら見て参りました。
主演のヒュー・ジャックマンは当然のごとく素晴らしかった。レ・ミゼラブルでもならした美声に渋い表情、ハッとする熱いまなざし。
音楽もララランドのど安定コンビで各シーンを存分に盛り上げる。
映画館で見れて良かった〜、と思う反面、鑑賞後振り返ると「ずいぶんあっさりした映画だった」という感想になった。
まず、テンポが非常に良く進む。悪いことでは無いんだけど、各シーンがどんどん流れていってさっきまで見ていたものに対する視聴者の感情が置いてきぼりにされる。気分が追っつかないのだ。
そして、肝心のショーそのもののシーンが全然無い。歌であっさり流すんじゃなくってちゃんとサーカスやってるとこを見せて欲しかった。歌って踊ってばっかりでフリークの人たちがそれぞれお客に何を見せているかが少な過ぎる。サーカスそのものは「ショービジネスやってます」感を出すためのちょっとした要素だ。
PとDとで見せたい内容に違いがあったんだろうか。監督や脚本家的には「主人公と奥さんの話」として描いていて。でも視聴する側が期待していたのはもっとエンターテイメントな部分。
プロットとしてはありがちなハリウッドのサクセスストーリー。そう感じるのは恐らく脚本が妙を発揮したかった部分を小気味よく編集で切ってるからか。
その分各カットのギミックの妙が光っていた。
新婚夫婦が屋上で歌うシーンの踊りに合わせて風に舞う洗濯物、若手プロモーターを口説くシーンのバーでのショットグラスのやり取りなど、画作りで面白いこと考えるなあと感心する。
カメラワークや構図にゾクゾクするような天才性を感じるタイプとは違うが、見ているだけで画面が楽しいのは監督がアイディアマンなのだろう。
本作の最大限に惜しいところは、ラストシーンに向けての盛り上がりに欠けているところ。
全てを失い、それでも残ったものを再発見し、劇場がない?ならテントでやるぞ!
ってところで次のシーンではもうテントの中で最後の歌を歌ってる。そこはテントが立ち上がりサーカスが復活する部分をもっと大々的に見せて欲しかった。OPに繋げるなら繋げるでもっと関連性を強調すべきなのに、事後的に「仲良くなったよの図」を見せられても、「あ、もう解決しちゃってるの?」と拍子抜けだ。
この終わり方のおかげで作品全体も「あっさり」の印象になってしまった。
尺の都合でああいう編集にせざるを得なかったのかな。
総評としては、雰囲気素敵なんだけど惜しいミュージカル、となりました。