「バリアフリーとは甘やかすことではない」グレイテスト・ショーマン k_keitaroさんの映画レビュー(感想・評価)
バリアフリーとは甘やかすことではない
ストーリーが終始不快だった。
男が女に惚れる瞬間は描かれているが、相思相愛になるきっかけがまるで描かれていない。
バーナムとチャリティ、フィリップとアン共に二人の間には身分、人種という障害があるがその葛藤がない。
コレコレこういう理由でこの人は素敵なんですという説明がないので、キャラクターがとても薄っぺらに感じてしまう。
そして男たちは女を裏切るが、なんとなく許されてしまう。フィリップの裏切り(ジェニーのショーの時に手を離す)は物語の根幹に関わる大きな裏切りだが、その件はスルー。許されるきっかけは事故による自己犠牲。(炎の中から現れたバーナムの拳からは三本の爪が出ていた)(嘘)
フリークスとバーナムの関係も同じで、思いつきでフリークスを雇い始めたバーナムをフリークスたちは簡単に信じ、信頼関係を築く。その瞬間にショーが完成している。
そして、裏切り、簡単に和解する。
どこがグレイテストなのか?
興行師という世界一怪しい商売の男をキラキラの笑顔で誤魔化して許容してしまうのはあまりにも甘すぎないか?
障害を持った人間をなんの葛藤もなく雇い、周囲を裏切り簡単に許される、そんな甘やかされた主人公から僕は人としての魅力を感じなかったし、フリークスがフリークスとして活躍しないショーも何のためのショーなのかが良く分からなかった。
バーナムをジャック・ブラックとかスティーブ・カレルとかコメディアンにゲスな人間として演じさせた方がもっと物語を掘り下げられたのではないか?
終始甘やかされた主人公の作品に「this is me」と言われてもな。
金をかけたPV集のようでとても空虚な映画だった。
逆に実在のバーナムの生涯を読むなりなんなりすると、その行間で端折っている部分が汚い物に蓋をしているようで実に不快。
それに「2001年宇宙の旅」のようにあえて分かりづらく作っているならまだしも、このエンタメ作品でその"感動的な行間"を意図的に作ってあるのであれば、ものすごく下手な映画。
カンフー映画のように「ストーリーがつまらなくてもアクションが良ければ良し」みたいなあえてIQを下げた観方をした方が素直に感動できるんでしょうね。
全部説明されて、一から十まで画像にならなきゃ理解できないなら少し本を読んで想像力を磨いた方がいいよ。
少しは、シーンとシーンの間に流れた時間を想像して。