「探偵が命を燃やすもの」探偵はBARにいる3 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
探偵が命を燃やすもの
暫く探偵業から離れ、『駆込み女と駆出し男』や『アイアムアヒーロー』などで好演見せてくれたが、そろそろまた“俺”に会いたくなってきた。ススキノのあのBARを訪れると、“俺”は探偵の依頼を待っていた。
近年の邦画の中でもこれほど新作が楽しみなシリーズもなかなか無い。
探偵“俺”と相棒“高田君”、三度目の調査開始!
とにかくこのシリーズが好きだ。
2枚目半がハマり役の大泉洋。
ボーッとしてるけど頼りになる松田龍平。
二人の絶妙なコンビネーション。
昭和風のハードボイルド。
体を張ったアクション。
この世界観に必要不可欠な美人ヒロイン。
悲しく切ない事件の真相。
どれもこれも好きだ。
高田君のオンボロ…じゃなかった。ご免ね~ご免ね~、いい子だね~な愛車。
コワモテだけど協力してくれる松重若頭(ゴツイ子分が個人的に好きなんだよね~)、エロエロ挑発の行きつけのウェイトレス、情報屋の記者、客引き、オカマバーの仲良し…。
お馴染みのネタ、お馴染みの面々。
マンネリだとか、『1』『2』の方が面白かったとか言われようが、別にいい。
もう一度言うが、どれもこれも、この探偵の世界が好きだ。
なので、採点は必然的に甘々の標準点以上にはなってしまうが、それでも今回も安心安定の面白さだったと思う。
高田君の後輩からの依頼。失踪した女子大生を捜すありふれた依頼と思っていたが…、
背景には札幌裏社会が関わるヤバいヤマだった…!
失踪した女子大生のバイト先である“表向き”はモデル事務所。
そこの美貌のオーナー、マリ。敵方味方か、文字通り探偵を振り回すファム・ファタール。探偵は昔、何処かで会ってるような…? 北川景子の美貌はこの世界観にぴったり映える。
世間一般的にはやり手の社長だが、本性はイカれたサディスト。この手の役柄はリリー・フランキーの十八番。
今回は原作には無いオリジナル・ストーリーらしく、監督もバトンタッチ。
多少代わり映えあったと言えるのは、スローモーションのアクションの見せ方くらいか。
粗い点や難点も。
あるVIPなSPゲストを迎えての一か八かのクライマックス、警官が多く配備されたあの場で、何で見た目バリバリヤクザのリリー社長が警官に警戒されないのかとか。何でマリが易々拳銃を持ち込めたのかとか。
でも、ここら辺も良くも悪くもの特徴。
宣伝にもなっている探偵史上最も哀しいラスト。
正直これは、『1』の方が哀しいものだった。
人によっては肩透かしに思うだろう。
だって、自分の○○でもないし、ただ○○○が同じなだけ。
たったそれだけの為に、手を血で汚し、危ない橋を渡る。
最初はちと動機が弱いかなと思ったが…、彼女の立場になって考えてみたら、結構じわじわときた。
生きてても死んでてもいい、空っぽの自分。
そんな自分に、あの時探偵がかけてくれた何気ない言葉。
命を燃やせるもの。
自分が命を燃やせるものとは…?
人も殺め、してきた事は決して許されない。
馬鹿で愚か。
大層な動機でもない。
が、たったそれだけの為に命を燃やす姿は、哀れで、憐れで、悲しく切ない。
そして探偵もまた命を燃やした。
それはシリーズに一貫している。
どんな状況であろうと、どんな理由であろうと、依頼人を守る為に命を燃やす。
さて、もう一つの話題、探偵と高田君の決別…?
これはある意味、オチだったね。
エンディング後の映像とか、このシリーズらしい。
暫くコンビ解消でなくて何より。電車で片道20分だもの(笑)
探偵はいつものBARで次の依頼を待っている。
こんにちは。小雪、尾野真千子、北川景子ときて、次は誰をヒロインに探偵と高田くんがコンビを組むのでしょう。続編がこれほどにまで待ち望まれる映画は今ないですね。