ドリームのレビュー・感想・評価
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知ってる、あなたがそう思っていること
東エリアのボスが、西エリアのボスに、黒人に偏見は無いのよ?と言った後の返しが最高でした。別に意地悪でやっているのでは無いと、そこに差別がある事を理解していない事を、知っていると。こういう、無意識の区別が差別の本質なんだろうなーと思いました。映画は技術と知識があらゆる逆境を跳ね除けていくのが痛快で面白かったです。
NASAの影の立役者
60年前のNASA創生期の実話らしい。結論、良作で感動した。
何故今、映画化されたのか?は、言わずもながだが、現大統領と無縁では無いだろう。
公民権運動で揺れていた時代の人種差別が、今とは次元が違う凄まじさだったことを改めて知ったが、中でも計算係の白人の冷淡な目線は、今のトランプ政権誕生の背景とダブってしまった。故にケビン・コスナー演ずる本部長が白人専用のプレートを叩き割るシーンには、監督の差別に対する反目の意思表示を感じた。多くの観客も心地良さを感じたシーンだった筈で、NASAが立直る重要な転換点だったと思う。
本作の特筆すべき魅力は、主人公3人の凛とした美しさ、卓越した知性と行動力だと思う。
何かに行き詰まっているビジネスマン(特に女性)の方は、是非ご覧あれ。きっと、背中を押して貰える筈です。
頭脳と技能と行動力で、前例を作った開拓者たち
NASAで働く優秀な黒人女性たち。主に3名の女性に注目し、それぞれの女性がアメリカ社会において成功を勝ち取っていく様子を爽快に描いている。彼女たちはNASA内だけでなく、アメリカという国、そして世界的な新たな「前例」を作った開拓者たちである。それまでなかった概念を作り、それまで閉ざされていた門を開き、それまで見つけられなかったものを見つける。とても困難な道のはずだけれど、それを彼女たちの優秀な技能と頭脳と行動力で乗り越えていくその様子がとにかくとても格好いい。ただ才能が有り優秀であるだけでは足りない。その技能を活かすための頭脳や向学心がなければならない。そしてそれを行動に移せなければ意味がない(この映画には不満を愚痴るだけの女性はどこにもいない)。3人の女性たちにはそれらの力がきちんと備わっていて、それぞれの道でぞれぞれに前例を作り新たな扉を開けてゆく実に爽快で清々しい物語で、かなり勇気をもらった。彼女たちのように優秀ではないけれど、せめて行動力くらいは持ちたいと素直に思う。
もちろん物語の根底には、当時のアメリカにおける人種および性別での差別・偏見が描かれている。黒人の女性たちが当時のアメリカで生きるということがどういうことだったかが率直に描かれていて考えさせられる。しかし一方で、この映画の印象はとても爽やかで心地よい。3人の女性たちは差別を受けても凛として湿っぽく落ち込んだりもしないし、物語のそこかしこに散りばめられたユーモアには素直に笑いがこぼれる。さながらハートフルドラマだとかフィールグッド・ムービーの様相に近しい。かと言って、もしこの映画がまるで微温湯に浸かったようなフィールグッド・ムービーであったならこんなに感動するはずがない。寧ろ、この映画がフィールグッド・ムービーの様式を借用したことこそがこの作品の長所で、そこに強い意義があるようにも思えた。
この映画には、とても大切なことが描かれているし、広く大衆に伝えたいテーマがしっかりとある。でもそれを小難しく重々しく描くだけが能ではない。この作品のようなユーモアと勇気と元気をくれる爽やかで心地よい映画だったからこそ、多くの人がこの作品を愛することが出来、映画のテーマが率直に心に響いた。とっつきにくいシリアスなドラマは一度見れば十分だが、この映画なら何度でも観たくなる。そしてその都度、映画のテーマを振り返ることが出来る。伝えたい深刻な思いだからこそ、あえてユーモアと清々しさをもって投げかけてきたのではないかと感じた。そしてそのやり方は、この映画の主人公の女性たちのスマートさにも重なるような気がした。拳を振り上げることが社会を変えるとは限らない。実際に社会を動かした人のやり方はきっともっとスマートで、彼女たちのように頭で考え、肉体を使って行動し、言葉で主張を伝えること。映画が見せたいのは、差別を受けて悲惨な目に遭う人の気の毒な姿ではなく社会を変えた人々の聡明さであり、またそれを実にスマートに映画に転換させているなぁと思った(一方「未来を花束にして」は拳を振り上げるだけの映画だったのが惜しかった)。
その上、見終わった後でこんなにスッキリ爽快な気分になれるんだから、これはいい映画だよね。
宇宙を切り口にしたダイバーシティ映画
今年の第89回アカデミー賞の作品賞にノミネートされていた、超話題作。
米国の宇宙開発機関NASA設立初期の、”マーキュリー計画”を陰で支えた3人のアフリカ系女性スタッフの話。NASAは、1957年のソ連による人工衛星スプートニク1号の成功にショックを受けた米国が、ソ連に対抗するべく設立した、結構にわか仕立ての組織だったことが意外。
歴史映画としては、NASA設立直後の1962年、米国人初の地球周回軌道を飛行した宇宙飛行士ジョン・グレンのエピソード。つまり第56回アカデミー作品賞ノミネートの「ライトスタッフ」(1984)である。しかし、本作はそっちではなく、主人公キャサリン・ジョンソンの楽屋話を描いているというのがミソ。
3人は、確かにNASAの発展に多大な貢献をしているが、実際には同時期に一緒にいたわけではなく、そこは創作。ネタとしては、とてもいい素材だが、"宇宙開発競争の勝利"や"米国万歳"という観点では、またまた第68回アカデミー賞ノミネートの「アポロ13」(1995)が頭をよぎってしまう、そうなると感動作としては弱い…。ここまでくるとマニアの余計な経験値が悩ましい。
本作はテーマは、"人種差別"や"男女差別"であり、白人男性だけが活躍する、ダイバーシティ概念がなかった頃の、高いハードルを乗り越えた黒人女性たちの強い信念のストーリーとなっている。
当時の知られざる事実もいろいろ出てくる。黒人女性専用トイレがなかったことによる障害、NASAのロケット開発も人力計算だったということ、初めてIBMのメインフレームが導入されたが、NASAの優秀な科学者が使いこなせなかったことなどを知ることができる。
それにしても邦題の「ドリーム」!ってなんだ。原題の「Hidden Figures」のスマートさの足元にも及ばない。直訳すると、"Hidden Figures"="隠された人物"だが、"Figures"には"大物"的な意味合いもあるし、さらに"数字"や"数式"という意味もあって、映画を観るとメチャクチャうなずける。「ドリーム」って邦題をつけた配給担当は、アホか。
(2017/9/30 /TOHOシネマズ新宿 /シネスコ/字幕:長尾絵衣子)
感動
東西冷戦下、アメリカとソ連が熾烈な宇宙開発競争を繰り広げている1961年。ヴァージニア州ハンプトンのNASAラングレー研究所では、優秀な頭脳を持つ黒人女性たちが“西計算グループ”に集い、計算手として働いていた。リーダー格のドロシー(オクタヴィア・スペンサー)は管理職への昇進を希望しているが、上司ミッチェル(キルスティン・ダンスト)に「黒人グループには管理職を置かない」とすげなく却下されてしまう。技術部への転属が決まったメアリー(ジャネール・モネイ)はエンジニアを志しているが、黒人である自分には叶わぬ夢だと半ば諦めている。幼い頃から数学の天才少女と見なされてきたキャサリン(タラジ・P・ヘンソン)は、黒人女性として初めてハリソン(ケビン・コスナー)率いる宇宙特別研究本部に配属されるが、オール白人男性である職場の雰囲気はとげとげしく、そのビルには有色人種用のトイレすらない。それでも、それぞれ家庭を持つ3人は公私共に毎日をひたむきに生き、国家の威信をかけたNASAのマーキュリー計画に貢献しようと奮闘していた。
1961年4月12日、ユーリ・ガガーリンを乗せたソ連のボストーク1号が、史上初めて有人で地球を一周する宇宙飛行を成功させた。ソ連に先を越されたNASAへの猛烈なプレッシャーが高まるなか、劣悪なオフィス環境にじっと耐え、ロケットの打ち上げに欠かせない複雑な計算や解析に取り組んでいたキャサリンは、その類い希な実力をハリソンに認められ、宇宙特別研究本部で中心的な役割を担うようになる。ドロシーは新たに導入されたIBMのコンピュータによるデータ処理の担当に指名された。メアリーも裁判所への誓願が実り、これまで白人専用だった学校で技術者養成プログラムを受けるチャンスを掴む。さらに夫に先立たれ、女手ひとつで3人の子を育ててきたキャサリンは、教会で出会ったジム・ジョンソン中佐(マハーシャラ・アリ)からの誠実なプロポーズを受け入れるのだった。
そして1962年2月20日、宇宙飛行士ジョン・グレンがアメリカ初の地球周回軌道飛行に挑む日がやってきた。ところがその歴史的偉業に全米の注目が集まるなか、打ち上げ直前に想定外のトラブルが発生。コンピュータには任せられないある重大な“計算”を託されたのは、すでに職務を終えて宇宙特別研究本部を離れていたキャサリンだった……。実話ものでは良い出来だが、キーパーソンも欠かせない人物として大物俳優が起用されている。
キング牧師I Have a Dream思い出させて良い邦題
女性差別の上に黒人差別という厚くて高い壁が立ちはだかっているのを前にして、前向きに乗り越えていく姿が感動的。後ろ向きな考えにならないのは、神様に守られているという確信があるからなのだと思った。教会での礼拝や、その後の食事会の様子が描かれるけれど、信仰がなければ押しつぶされてしまった事だろう。
本部長を演じたケビン・コスナーが良い役で魅力的な人間を演じてみせた。有色人種用のトイレの看板を叩き壊す場面には泣かされる。
劇中にはヒューマニズムに溢れた場面が何度も登場して心を揺り動かされるけれど、最後に登場したご本人達の年齢を重ねたポートレートが美しくて一番よかった。主人公が100歳を目前にして健在という事だし、素晴らしい人生であった事が嬉しかった。
一方、半世紀が過ぎても差別は少なくなっても無くなっていない訳で複雑な思い。誰とでも仲良くしておくべきだと最近は強く思う。戦争にしろ、巨大な自然災害にしろ、甚大な被害は避けられない国に住んでいるのだから、イザとなったら頼れるのは隣国ではないですか。みんな見て見ぬふり知ってて知らないふりするけれど、日本人がいつ難民となって助けを求めることになるともわからないのに。
【感動・涙】名作品に相応しい実話
NASAの世界でも白人黒人の人種差別があったのは驚きでした。そして悲しかったです。
宇宙や解析幾何学のことは全然わかりませんでしたが、涙をこらえるシーンが沢山ありました。
例えば、ロケット開発でソ連に負けまいと、スピード重視の部長が、黒人女性の差別障害となる白人専用女子トイレの看板をハンマーで「NASAの小便はみんな同じ色だ」って叩き壊したのはウルッときました。
それを皮切りに3人の黒人女性が次々と回りの信頼を勝ち取って、壁を乗り越えていったのは嬉しかったです。
もう途中から、回りに悟られないように涙をこらえるので精一杯でした(笑)
最終的に黒人女性みんなが出世して待遇も改善されて良かったです。
アメリカの発展は3人の黒人女性が大きく関係していたと思うと胸が熱くなりました。
お薦めです!
これぞ賢い女の戦い方…
人類が宇宙を目指そうと言う時代に、彼女たちは女性である事やアフリカ系アメリカ人である事で能力に見合った仕事も報酬も受けられませんでした。
キャサリンは不理解な白人男性の組織の中で、メアリーはアフリカ系アメリカ人女性にとって不自由な社会を変える必要がありました。そしてドロシーは自分の後に続く者の為に自身の責任と信念を貫かなくてはいけませんでした。
この映画には女性ならずとも男性でも社会との折り合いをどう付けるのか?と言う点で、全ての人にエールを贈るでしょう。特に日本人女性には、不理解と傲慢と我儘な日本人男性社会と立ち向かう為の信念を彼女達に学ぶことは有益と思えます。
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