「キャスティングの持ち腐れ」ドリーム うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
キャスティングの持ち腐れ
「ヘルプ~心がつなぐストーリー」と言う映画が大好きで、味を占めて同じようなジャンルの映画は出来るだけ見ようと思っているのですが、今回は気合入ってました。
NASAが舞台で、黒人差別にくじけない女性が主人公、オクタヴィア・スペンサー!
「こりゃ、見に行くしかない」という運びに。
結果、やや肩透かしを食らったような手応えだったのですが、それでも、ケビン・コスナーが彼女たちに理解を示すシーンは感動で震えました。
残念だったのは、3人である必然性が薄いことです。天才的な計算能力があるキャサリンの「闘い」だけにフォーカスしても良かったし、むしろそのほうが良かったんじゃないかとも思いました。
最近見たんですが、「キューティ・ブロンド」と言う映画では、ブロンドである女性が、その偏見から受ける不当な扱いを、持ち前のポジティブさと、奇跡のような幸運で乗り切っていくコメディでしたが、あえて誤解を恐れずに言うなら「同じ」目線の映画だと思いました。
差別と偏見を同列で語ることは、許されないと承知していますが、映画ではどちらも主人公を苦しめる「試練」として語られ、主人公たちがそれを乗り越えていくことに観客は共感を覚えます。だからシリアスなヒューマンドラマであろうが、能天気なコメディであろうが、登場人物たちは映画の中で泣き、苦しみ、勝利していくのです。
「ドリーム」に話を戻すと、3人の黒人女性たちが、NASAで受けてきた不当な差別と闘い、正当な評価を得るまでを描いたドラマです。ところが3人が力を合わせて闘うというのではなく、それぞれが自分の才能で勝ち抜いていくお話で、ドロシーとジャネールの二人は添え物のような扱い。
他にも大勢のマイノリティが差別されていた時代で、その舞台がたまたまNASAだったというだけのお話に思えました。つまり、どこのオフィスでもこの時代、きっとこのような闘いが繰り広げられたのです。
人類が月を目指そうかと言う時代に、肌の色で優劣をつけている場合じゃないという認識が「当たり前」じゃなかった。それどころか、今世紀に至っても白人至上主義なんて言葉がはびこっているんですから、こういう作品が評価されるのは当然です。
でも、肝心の映画そのものは、さほど強い感動が味わえるでもなく、それぞれの俳優たちがいい仕事をしているな、と言う程度のお話でした。
個人的には、ジム・パーソンズが「ビッグ★バン・セオリー」でのコミカルな味を消し去って、嫌味な同僚を演じていたのが悲しかった。もう少し見せ場を作って欲しかったし、キルスティン・ダンストも、抑えたいい演技をしていますが、前述の通り、ここはリース・ウィザースプーンか、ブライス・ダラス・ハワードをキャスティングして欲しかった。とにかく、豪華なキャスティングは、集めた顔ぶれにかかわらず、さほど効果を発揮していません。
私が期待していたのは、人類の成し遂げた偉業、有人月面探査には、語られないマイノリティたちの貢献があった。そこにフォーカスしたドラマだったのですが、それほどの事でもなく、時代に翻弄された人たちの群像劇に収まってしまっている印象です。その味付けとして、「人種差別」と「東西冷戦」が選ばれただけのように感じました。
2017.10.2